「亀有のおいしい水売りますの巻」(ジャンプ・コミックス第91巻収録)
今回は、水不足にあえぐ日本で、両さんが水を商材にひと儲けを企むお話をお届けする。
本作が描かれたのは、1995年。1993年から1994年にかけて起こった「平成の米騒動」をモチーフに、米と同等以上に人間にとって不可欠な「水」を取り上げている。
日本は、夏季の水不足が話題に上がることはあれども、良質な水質を誇る上下水道の恩恵を全国どこにいても享受できる国だった。
だが近年においては、高度経済成長期に敷設された水道管が老朽化し維持・管理が困難になっている自治体が続出し、水道事業に要する人材と資金を確保できない地域も増加。さらには、水道事業の民営化と外資企業参入への懸念……など、水にまつわる課題は極めて多い。
水にまつわる問題というと水害、治水が思い浮かぶが、資源そのものの問題や、水を自由に手に入れられなくなる危険性を真剣に意識すべき時代が訪れているのかもしれない。
本作をお読みいただく前に、両さんが「水」で金儲けをしようとする、もうひとつのエピソードを紹介しておこう。
「甘露を求めて!!の巻」(ジャンプ・コミックス第73巻収録)がそれで、水道水を飲まない中川、麗子への怒りにはじまり、派出所の庭力温泉脈を掘り当てて一攫千金をねらうもすぐに湯が枯れてしまい、やがて温泉の偽装へと……という、両さんらしさ、『こち亀』らしさがたっぷりの一作だ。
1990年に描かれたこのお話は、2004年に相次いで発覚した温泉偽装事件(入浴剤や水道水の使用)を先取りしてもいる。
なお9月7日からは、水にまつわる災害で東京都が水没する衝撃の一作をお届けする予定だ。
それでは次のページから、濡れ手に粟の「水商売」に励む両さんのバイタリティをお楽しみください!!