家庭でできること
では、家庭では何ができるのか。
9月1日からの新学期が始まる前に、まずは親自身のことを振り返ってみるとよいでしょう。仕事に追われて子どもとの会話が減っていなかったか、子どもが話しかけてきても「後でね!」と言ったままにはなっていなかったか……。
これらが悪いというわけではありません。ただ、親も目先のことに一生懸命だったということです。不満足を埋めようと頑張ってきた代償です。
これに気づいてから、子どもの様子を見てみましょう。新学期の始まりが近づくにつれて、食欲は減っていないか、眠れていない様子はないか、学校のことを話すのを嫌がらないか。それらがあるならSOSのサインです。何が嫌なのかをしっかりと聞き遂げてやるといいでしょう。
その際、提案や助言をしてはいけません。親の意向に沿おうとしてしまい、子が余計に苦しくなるかもしれないからです。問題をいったん保留にし、大人も子どもも目先の頑張りから離れて、当面はそこそこに生きていければよいのです。
筆者が子どもの相談に訪れた親に対して行う働きかけは、これです。
子どもの心が充足されるには何が必要なのかという原理・原則に立ち返ると、まずは大人がのびのびと生きて心身ともに健康になる必要があります。さもなければ、その恩恵が次世代に伝わることはないような気がします。
文/植原亮太