「国富の流出」と呼ぶべき事態である

これは単なる不動産投資や資本取引ではない。「国富の流出」と呼ぶべき事態である。かつて日本企業が米国の不動産や企業を買い漁り、反発を受けた1980年代の構図が、今度は逆に日本に押し寄せているのである。

ところが、政治の世界はこの惨状を直視しようとしない。石破首相と赤沢大臣は、米国との交渉で「自動車関税を15%に抑えた」と誇らしげに語る。まるで歴史的な勝利であり、国難を救ったかのように。だが実際には、自動車産業という一部の輸出企業を救ったに過ぎない。

さらに忘れてはならないのは、この交渉の裏で日本が米国に約束させられたものだ。最新鋭の戦闘機導入、ミサイル防衛網の整備、宇宙・サイバー領域での防衛協力──防衛費は今後確実に膨張する。GDP比2%を超える国防費は、過去に例を見ない規模だ。

そして財源はどうするか。結局、国民に押し付けられる。社会保障費の抑制、さらなる増税。特に象徴的なのは「物価高対策」を掲げながら、最も即効性のある消費税減税を石破首相と赤沢大臣が強固に阻止したことだ。

彼らは「減税すれば財政規律が崩れる」と繰り返すが、実際は財務官僚の論理を代弁しているに過ぎない。国民生活よりも、霞が関の都合が優先されているのだ。

アベノミクス相場の逆回転が起きる可能性

では、この状況が永遠に続くのか。答えは「ノー」だ。日銀が利上げに動き、米国が利下げに転じれば、金利差は急速に縮小する。そうなれば円高への転換は避けられない。

円高が進めば、輸出企業の利益は一瞬で吹き飛ぶ。円安に支えられていた日経平均も逆回転を始め、投資家心理は急速に冷え込むだろう。かつて2012年のアベノミクス相場で円安と株高が同時進行したように、今度はその逆回転が起きるのである。

なぜ「日本のAIブーム」に懐疑的? 日経平均高騰のなか、海外投資家が注目するお宝銘柄とは…アベノミクス相場”逆回転”を危惧も_2

こうした不安定な環境のなかで、特に目立っているのが「AI関連銘柄」だ。生成AIは確かに社会を変える可能性を秘めている。しかし、現在の株価は業績以上に膨らんでおり、期待先行のバブル的様相を呈している。

例えば、PKSHA Technology(3993)は大規模言語モデルで注目されるが収益基盤は不安定と私は分析する。ABEJA(5574)に関しても上場直後に急騰したが利益体質は脆弱と見える。

エクサウィザーズ(4259)もAIサービスを展開するも赤字が続いており、さくらインターネット(3778)は国産GPUクラウドで脚光を浴びるが利益貢献は未知数である。

サイバーエージェント(4751)に関しては、自社LLM開発を強調するが、本業収益への寄与は小さい。