「農協さんがこんなに何度も吊り上げるなんて初めてでした」

証言してくれたのは、千葉県山武郡横芝光町の株式会社向後米穀の向後雅秀代表。同社は地元の農家からコメを仕入れてスーパーや量販店などに新米を卸しており、コメの動向分析には最適のウォッチャーだ。まず、最近のコメ価格の動きについて聞いた。

「価格が下がる方向ではありますが、急に大幅には下がらないでしょう。下がるにしても5キロで100円200円程度かなと思っています。ここにきて新米がだぶついてきた感はあるのですが、8月や9月にはまだどこの小売も『あるだけほしい』という状況が続いていて、価格も上向きだと考えられていました。

新米が出ると、1発目の出荷の勢いがそのまま続くか、もしくは一服して落ちつく場合に分かれますが、今年は後者ですね。また、令和のコメ騒動という異常事態だった時よりは新米の動きが鈍いのはありますね。私のところはおかげさまで毎年、精米量が増えているので、新しい農家さんと折衝して集荷量を増やしていますが、昨年は新米の収穫前に在庫がなくなりましたからね」

取材に応じる向後代表(撮影/集英社オンライン)
取材に応じる向後代表(撮影/集英社オンライン)
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今年の集荷状況はどう推移したのか。 

「田植えの時期から農家さんのところに色々な買いが入ってきていたので『これはまずいぞ』と思っていました。実際、8月の集荷の時期はだいぶ苦戦しましたよ。農協さんが60キロあたりの買い取り金額を決めてから、うちらはそれに負けないよう300円とか500円とか高く買うという世界なんです。

今年最初、農協さんは29800円でスタートして、ウチらは30000円~30300円で仕入れていました。それから農協さんが2000円上げてきて、ウチらも同額追随し、さらに農協さんが価格をあげて、最終的に個人の農家から仕入れるのは34000円くらいまで吊り上がりましたね。農協さんがこんなに何度も吊り上げるなんて初めてでした」