過去200年、株式は圧倒的に高いリターンをもたらしてきた
上記の根拠を強力にサポートするのが、過去の実績だ。株式市場の歴史を長期的に見ると、株価は他のどの資産クラスよりも圧倒的に高いリターンをもたらしてきた。
ジェレミー・シーゲル博士の『Stocks for the Long Run』(邦題:『株式投資』第6版、2021年)では、1802年から2021年までの219年間にわたる株式市場のデータが詳細に分析されている。同書によると、1802年に株式市場に投資した1ドルは2021年までに233万ドル(正確には2,334,920ドル)にまで成長したことが示されている。なんと233万倍である。
これに対して、同じ1ドルをキャッシュ(現金)で持ち続けた場合、その価値は0.043ドル、つまり20分の1にまで減ってしまったのだ。この圧倒的な差が、株式投資の威力を如実に示している(図1)。
これほど長期間にわたって安定したリターンを示している投資対象はほかにない。現金や債券、金といった他の資産クラスと比較すると、株式は圧倒的なパフォーマンスを示している。特に現金はインフレによって価値が目減りし続けており、長期保有には適さないことが明らかになっている。
特に注目すべきは、この株式の圧倒的なパフォーマンスが「複利」の力によって実現されたことだ。株式投資の年平均リターンは、債券や金と比べてそれほど大きな差があるようには見えないかもしれない。しかし、この小さな差が200年という長期にわたって複利で積み重なると、1ドルが233万ドルになるという途方もない資産価値の差が生まれる。このような「複利の奇跡」は、長期投資の威力を如実に示している。
短期的に見れば、株式市場は上下に大きく変動し、時には急激な暴落を経験することもある。しかし、10年、20年、さらには50年という単位で見ると、株式は常に上昇トレンドを維持してきた。第一次世界大戦、世界恐慌、第二次世界大戦、オイルショック、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショックなど、幾多の危機を乗り越えてもなお、株式市場は復活し、その価値を高めてきた。
株式の長期リターンについては、同書で株式が過去200年間にわたりインフレ調整後で年率6.6%のリターンを生み出してきたことが実証されている。
過去の実績から学べることは、短期的には株価は上下に激しく変動するものの、長期的には経済成長とともに上昇する方向性を持っていることだ。そしてその上昇率は、他のどの資産クラスをも圧倒する水準にある。これは単なる希望的観測ではなく、200年という膨大なデータに裏付けられた事実なのだ。
よくいわれるように、過去のデータは将来のリターンを保証しない。しかし、「資本主義経済の拡大再生産」の現時点での成績表ではあるのだ(図2)。
文/水瀬ケンイチ