インドの離婚率は1%?

「インドの離婚率は1%を少し上回る程度しかない。それだけ結婚を真剣に捉えているということだろう」

結婚相手などを探すマッチングアプリを開発したムルガベルさんの言葉が引っかかっていた。

なぜそんなに離婚率が低いのだろうか。永遠の愛を誓った夫婦と言っても、何十年も一緒に生活すれば、性格や価値観の違いが出てくる場合もあるのではないか。そんな疑問を抱えながら、首都ニューデリーにある裁判所を訪れた。

法廷の出入り口周辺は順番を待つ親族や関係者であふれ、かなりにぎやかだ。基本的に静寂に包まれている日本の裁判所とは大きく違う。裁判長の許可を得て法廷内に入ってからも、外で待機する人たちの声が聞こえてきた。

傍聴をしていると、30代前後とみられる夫婦が、透明の板で仕切られた裁判官の前に立ち、ダウリーと呼ばれる持参金を巡って争っていた。ダウリーは、結婚する際に、妻側の家族が夫側にお金や物を渡す古い風習だ。本来は違法だが、「贈り物」などとも呼ばれ、数百万円から数千万円になるケースもある。なかには、お金ではなくて車や家を贈るケースまであるという。

持参金(写真はイメージです)
持参金(写真はイメージです)

少しでも社会的地位が高い男性と結婚させたい妻側と、それにつけ込む夫側の思惑が相まって、社会に広く浸透してきた。女性側の負担は重く、夫側の要求に応えられず、家庭内暴力に発展するケースも少なくない。

匿名を条件に取材に応じてくれた女性(37)は、親戚の紹介で結婚した際、夫側の要求で150万ルピー(270万円)ほどのダウリーを渡したと明かした。

だが、結婚後に妊娠できないことが分かると、夫側は「補償」として、バイクを購入するよう要求。夫からは「役に立たない女だ」とののしられ、殴られたり蹴られたりした。命の危険を感じ、しばらくして夫の家から逃げ出した。

彼女は、中学校の年頃までしか学校に行けず、読み書きも十分にはできない。仕事をしている夫に比べて家庭での立場はどうしても弱くなってしまう。「夫と離婚して、ダウリーとして支払った分を取り戻したい」と小声で語った。