「多くのインド人にとって、結婚式は人生で最もお金を使う機会」
インドは多民族国家で、連邦公用語であるヒンディー語以外に、憲法で定められている言語が21もある。ヒンディー語や英語が流暢に話せない人も多く、相手がどの言語を使っているのかは大事な要素になっている。国民の約80%を占めるヒンドゥー教徒が、少数派のイスラム教徒と結婚するのもタブー視されている。
さらに取材を進めると、生まれた年月日と時刻、場所の情報をもとに星の巡りを計算し、未来を占う占星術を頼りに、相手選びをする男女や親が多いことも分かった。
南部ケララ州の警察官として働くニドゥヒン・デブさん(33)とアクヒラさん(27)は、マッチングアプリを使い、住んでいる地域が近いといった条件に加えて、占星術が示す「良き相手」に合致する相手を見つけるまでに2年近くかけた。
結婚式には、親や親戚、友人たち750人を招待して盛大に祝った。「結婚するまで時間がかかったけど、お互いに考え方も合うし、良い相手に恵まれた。3人くらい子どもを産みたい」とアクヒラさんたちは声を弾ませた。
30歳以下の人口が半数を占め、人口ボーナス期のただなかにあるインドの結婚市場は急拡大を見せ、22年には結婚の人気シーズンである11〜12月だけで約320万組が式をあげたと言われる。式をあげる時も、占星術を使って縁起の良い日や時間を決めていく。
首都ニューデリーでは週末に結婚式の開催が集中したことで「結婚渋滞」も発生。巻き込まれた新郎が式に遅刻するケースもあったと報じられた。
豪華な食事や衣装、宝石、飾り付けはもちろん、時には高級ホテルを貸し切りにしたり、何千人もの招待客を呼んだりして数日間にわたる祝宴を開くカップルもいる。
大富豪が娘の結婚式のために約1億ドル(約140億円)をかけたと報じられるなど、国内の結婚市場の規模は約500億ドルに上るとの試算もある。
ムルガベルさんは「多くのインド人にとって、結婚式は人生で最もお金を使う機会。インドの離婚率は1%を少し上回る程度しかない。それだけ結婚を真剣に捉えているということだろう」と言った。