ライフジャケットの「レンタルステーション」という新たな取り組み
前述の東京都の報告書によれば、過去10年間の水難時におけるライフジャケット着用状況は「遊泳中」が4.2%、「磯遊び中」が1.8%と、その割合はかなり低い。
さらに、死者・行方不明者の割合は「ライフジャケット着用時」が「非着用時」にくらべて1~3割程度低くなっているという。ライフジャケットを着用したほうがより安全であるにもかかわらず、その所有や着用が進まない現状がある。
同報告書によれば、ライフジャケットを持たない理由として、「使用頻度の少ないから」「レンタルすればよいから」「危険性が少ない水辺でしか遊ばないから」「持ち運びや保管時にかさばるから」といった意見が多く見られ、改善のために「持ち運び・保管のしやすさ」「動きやすさ」「メンテナンスの容易さ」などを要望する声があがっているという。
こうした現状を踏まえ、水辺における事故の防止に向けて、ライフジャケットを無料で貸し出す取り組みが行なわれている。ライフジャケットの「レンタルステーション」設置活動を推進している公益財団法人マリンスポーツ財団の担当者に話を聞いた。
「本事業は、アメリカで行われている先進的な取り組みを参考に、IBWSS(International Boating and Water Safety Summit)視察をきっかけとしてスタートしました。2015年には、神奈川県の逗子海水浴場、静岡県の浜名湖・新居弁天海水浴場、弁天島海水浴場の3カ所で試験的に運用を開始し、以降全国各地へと展開を広げています。
現在は全国約60ヶ所、延べ600着以上を配備しており、2024年度は延べ10,359人の貸し出し実績があります」
このように話す担当者によれば、ライフジャケットの着用が進まない要因の一つとして「依然としてその存在や重要性が広く認知されていないこと」が挙げられるという。
特に、「ライフジャケットは乗船時の必需品という認識はあっても、釣りや遊泳など水辺のレジャー全般で着用するものという印象はまだ薄いのが現状」だと話した。