14億人超えの中国SNSで電動アシスト自転車を利用できるサービスも

街を走る電動キックボードの大部分はシェアサービス会社のもので、2024年11月の警察庁調査では事故の92.7%はレンタル車両で起きている。

シェアサービス会社は無免許の人が乗ることに対応し、アプリで行なう「交通ルールテスト」に全問正解しなければ電動キックボードには乗れないと対策を取っていることをアピールする。

だが、渋谷を歩いていた22歳の大学生Cさんは「終電を逃した時とかにタクシーより安いので重宝しています」と言いながら、「“飲酒して使った”とか、“テストで友人に答えを教えてもらって乗った”とかいう話は聞いたことがあります。手軽さが裏目に出ているなとは思います」と話す。

違反を積み重ねれば警察から呼び出しも…取材班が入手した(違反者の)講習修了証明書
違反を積み重ねれば警察から呼び出しも…取材班が入手した(違反者の)講習修了証明書

石垣参議院議員も質疑で、別人に答えてもらったり、別の端末で答えを調べて入力したりする方法でテストをクリアできてしまうではないかと指摘。

これに坂井国家公安委員長は「(テストの)更なる充実改善はこれまた必要だと思うので、事業者に働きかけを行なってまいりたい」と答弁し、改善の必要性を認めている。

その事業者は事態をどうみているのか。

最大手のシェアリングサービス「LUUP」を運用する株式会社Luupにたずねると、警察庁が発表した違反検挙や事故のうち同社の電動キックボードと電動アシスト自転車に絡むものがどれだけあるかは「弊社で集計したものではないため承知しておりません」とした上で、交通ルールテストの実施や違反者のアカウント凍結措置などは警察庁のガイドラインを遵守していると説明している。

いっぽう、この警察庁統計が国会で示される直前の6月10日から、同社は月間アクティブユーザーが14億人を超える中国のSNS「微信(ウィーチャット)」のミニプログラムで電動アシスト自転車を利用できるサービスを開始。

中国人観光客の多くがLUUPの決済に必要なクレジットカードを持っていないため、ウィーチャットの支払い機能での決済をできるようにすることでLUUPの利用増加を図る措置だという。

中国のSNS「微信(ウィーチャット)」(写真/Shutterstock)
中国のSNS「微信(ウィーチャット)」(写真/Shutterstock)
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同社は、ウィーチャット利用者は交通ルールの啓発動画を視聴し全8問の交通ルールテストに連続正解しなければサービスを受けられないと説明。電動キックボードのシェアサービスにまでウィーチャットの利用を拡大することは「現時点では予定しておりません」としている。

渋谷で客を待っていた50代の女性タクシー運転手Dさんは「タクシー業界は最近外国人観光客の利用が増えていますから、おびやかされないといいですけど」と苦笑し、中国の観光客は電動アシスト自転車を使うだろうとみる。

インバウンドも加わり利用が拡大する電動キックボードや電動アシスト自転車などの1人用マイクロモビリティ。交通違反が続出するなら事故の危険に直結するだけに早急な対策が必要だ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班