一枚岩になりにくい自民党保守派

「私なりに腹をくくった。もう一回、党の背骨をガシッと入れ直す。そのために戦うと約束する」

参院選期間中から街頭演説で、総理の椅子への意欲を露わにしてきた高市早苗氏。石破退陣論の高まりを受け、その動きは素早かった。

自民惨敗の結果が出るや、7月23日に議員宿舎で、松下政経塾の先輩で昨年の総裁選で選対事務局長を務めた山田宏参院議員や、黄川田仁志衆院議員らと会合を持った。

「高市氏の前のめりな姿勢は、一部でひんしゅくを買っている面もある。高市氏は昨年の総裁選の決選投票前のスピーチでも、持ち時間の5分間を超過して話し続け、空気の読めなさを指摘された。

政調会長など枢要ポストを歴任し、真面目な勉強家として知られますが、もともと“飲み会嫌い”を公言しており、人心掌握術に長けたタイプではない。経済安保相時代の2023年には放送法を巡る総務省文書を『ねつ造』と主張するなど、その言動が不安視される面もあります」(全国紙政治部記者)

高市早苗氏(本人Xより)
高市早苗氏(本人Xより)
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そんな高市氏が党内の幅広い支持を得るには、未だ多数の課題が残っている。

その一つが、何かと分裂しがちな、自民党保守派をまとめられるかどうかだ。

「高市陣営は、いいヤツらが多いけど、一本気すぎるところがある。だから、党内でも浮いてしまうんだ」

7月後半、自民党のベテラン議員は、筆者の取材にこうぼやいた。要は、自民党保守派には、一枚岩になりにくい側面があるのだ。

実際、昨年の総裁選でも、当初は自民党保守派が一丸となって高市氏を推すムードに乏しく、推薦人集めもすんなりといったわけではなかった。その状況は今も変わっていない。

自民党総裁戦2024の共同記者会見(石破茂Xより)
自民党総裁戦2024の共同記者会見(石破茂Xより)

たとえば、高市氏が顧問を務める勉強会「保守団結の会」は、党内でも有数の保守系グループだ。その会長の高鳥修一前衆院議員は、かつて稲田朋美元防衛相が主宰していた保守系勉強会「伝統と創造の会」で行動をともにしていた。

しかし、2020年に稲田氏がLGBT問題でリベラル寄りの姿勢に転じたことなどから、高鳥氏は同会を脱退した。袂を分かった高鳥氏は、保守団結の会を立ち上げた。

「このような経緯から、ともに保守系の勉強会でありながら、両会にはいまだ微妙な緊張関係が残っています。8月15日の靖国神社参拝なども、本当は合同で行えばいいのですが……。高市氏が総理の座を射止めるためには、大きな目的のために、まずは党内の保守派が団結することが必要です」(前出・自民ベテラン議員)

高鳥修一氏(本人Xより)
高鳥修一氏(本人Xより)