「懲役9年・罰金800万円」

その日、渡邊被告に下った判決は「懲役9年・罰金800万円」というものだった。

求刑よりは幾分か軽くなっていたものの、この判決にネットは騒然。「果たして、渡邊被告の罪はそこまで重いものなのか」という論争はさらに過熱し、作家でフェミニストの北原みのり氏は自身のXのアカウントで、「りりちゃん実刑に強く抗議します」として、次のように主張を綴った。

《家庭に居場所がなく10代を歌舞伎町で過ごす女の子だったリリちゃん(原文ママ)。歌舞伎町にたむろする女の子たちの多くがそうであるように、ホストにはまり、ホストクラブでのお金を捻出するために性産業で働いていたという。そういう意味でりりちゃんは、若い女性を搾取する街に丸ごと飲まれてしまった子どもであり、生きのびる手段は自分がされてきたように誰かを搾取することでしかなかったのかもしれない》

《倫理的でない女がより激しく厳しく罰せられる社会。一方、男は〝倫理的でない女〟を買うことで、貧しい女に金を与え、人助けをしたと自尊心を満足させることができるだろう。その行為を「頂き」と表現したりりちゃんの表現力は、きっといつか人から奪わない方法で生かせるはずだ。だから絶望しないで。なんだかそんなふうにりりちゃんに話しかけたい》

販売されていた「マニュアル」 本人SNSより
販売されていた「マニュアル」 本人SNSより
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俳優の高知東生も自身のXアカウントで《頂き女子の判決を聞いて「判決ガチャ」ってあるなと実感。子供に対する性犯罪で執行猶予となったり、明らかな性暴力でも無罪判決が出たり、子供への虐待死でも2~3年の判決が出ている。政治家なんか4000万円まで裏金不問だからな》と憤り、さらに《判決の基準が全く分からないし、判決が検事や裁判官次第って恐ろしい》と述べ、それに同調する感想も多く見られた。

渇愛: 頂き女子りりちゃん
宇都宮 直子
渇愛: 頂き女子りりちゃん
2025/7/10
1,870円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4093898119

「頂き女子」に迫った衝撃ノンフィクション

複数の男性から総額約1億5千万円を騙し取った上、そのマニュアルを販売し逮捕された「頂き女子りりちゃん」に迫った本作に大絶賛の声続々!

◎町田そのこさん
彼女が奪う側に戻らない道を考える。読んでいるときも、読み終えたいまも。

◎橘玲さん
すべてウソで塗り固められた詐欺師
家族や社会から傷つけられた犠牲者
彼女はいったい何者なのか?


―選考委員激賞!第31回小学館ノンフィクション大賞受賞作―

◎酒井順子さん
りりちゃんの孤独、そして騙された男性の孤独に迫るうちに、著者もりりちゃんに惹かれて行く様子がスリリング。都会の孤独や過剰な推し活、犯罪が持つ吸引力など、現代ならではの問題がテーマが浮かび上がって来る。
◎森健さん
今日的なテーマと高い熱量。とくに拘置所のある名古屋に部屋を借りてまで被告人への面会取材を重ねる熱量は異様。作品としての力がある。
◎河合香織さん
書き手の冷静な視点とパッションの両者がある。渡邊被告がなぜ”りりちゃん”になったかに迫るうちに著者自身もまた、”りりちゃん”という沼に陥り、客観的な視点を失っていく心の軌跡が描かれているのが興味深い。

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