「こわい……こわい……こわい」
逮捕、起訴された被告人のもとに、記者やジャーナリストが事件の取材のために面会に訪れることはよくある。しかし被告をシンボルにしようと考えたり、「一枚噛んでやろう」という目的で人が集まるという話はあまり聞かない。
面会希望者の増加に加え、SNSでも《性加害者は数年で出てくるのに、りりちゃんが13年はおかしい》《裏金の政治家たちは罪に問われないのに、なぜりりちゃんの罪は重いのか》などの意見が目立つようになってきた。
テレビのワイドショーでも「彼女への求刑は適切か、重すぎるか」という議論が交わされた。
渡邊被告の意図しないところで世の中が白熱し、「りりちゃん」の存在が再び巨大化して「渡邊真衣」とは別のものになっていっているように感じた。
そして迎えた、4月22日の判決当日の朝。19日に面会の機会を逃した私は、裁判当日にも接見ができることを知り、裁判前に拘置所へ向かった。当日は公判の内容が報道のメインになるからか、現地メディアの姿はほとんどなく、今度はすんなりと面会することができた。前回の求刑のあまりの重さに、ショックで自傷行為をしてしまったほどだった渡邊被告。果たして今、どんな気持ちでいるのだろうか。
面会室に現れた渡邊被告は、緊張した面持ちながらも、笑顔を浮かべていた。「裁判は嫌だけど、今回は泣かないようにします」「控訴はしません」ときっぱりと話す。
控訴しないということは、求刑通りだとすれば「13年」という刑期をまるまる受け入れるつもりということだ。
ただ、それでも「こわい……こわい……こわい」「でも、覚悟は決めてます」と揺れる感情をそのまま言葉に乗せ、私に伝えようとする。続けて、母親に話が及んだ。
「母からは錯乱した手紙が来ていました。お母さんが可哀そう。直子さん、私が繋ぐのでお母さんの話を聞いてあげてください」