女性たちが集まった「りりちゃん」という楽園

歌舞伎町時代の「りりちゃん」を取り巻く中でもひときわ異彩を放っていたのは、「りりストーカー」や「りりヲタ」と呼ばれるファンたちだったように思う。

その中でも「トップofりりヲタ」を自認しているのが、アーティストの増田ぴろよ氏だ。

ぴろよ氏とは、渡邊被告の公判でたまたま席が近くになることが多く、そこで法廷画をスケッチする姿を何度も目撃していたため、最初はどこかのテレビ局が依頼した法廷画家なのかと思っていた。しかしSNSを見てみると、「りりヲタ」として自らの意思で自腹を切って名古屋に行き、公判の傍聴を重ね、「りりちゃん」の姿をスケッチブックに残していることがわかった。

マスコミには属していないぴろよ氏が傍聴券を入手する方法は抽選しかない。そのため、友人たちや東海地方のホストたちに声を掛けて整理券を入手する列に並んでもらい、傍聴券をゲットしたのだという。時間も手間も、お金もかかっていることがわかる。これは並大抵の労力ではない。一体、渡邊被告のどこにそこまでの「引力」を感じているのだろうか。

しばらくSNSを通じてやり取りをした後、渡邊被告の判決が出てから約ひと月後の5月下旬、歌舞伎町のルノアールで話を聞いた。

ぴろよ氏は元モーニング娘。の安倍なつみによく似た、楚々とした女性だ。歌舞伎町を舞台に女性たちの受けた「傷」「母娘関係」などをテーマにしたアート作品を制作している。

ぴろよ氏が「りりちゃん」を知ったのは、2018年の冬頃だったという。

「私、もともとはメン地下(メンズ地下アイドル。大手の芸能グループに所属せずに活動する男性アイドルのこと)にハマっていたんですけど、その頃にはホストクラブにも通うようになっていたんですね。自分の作品のテーマが『自身の傷』を見つめることだったので、ある意味作品作りのためにも、ホストにもハマらなければならないと考えていたんです。入り口は〝作品のため〟だったんですけど、いつのまにかどっぷりハマってましたね」

当時はホストバブル真っ盛りで、TwitterをはじめとしたSNSでは、女のコたちが「ホス狂い」を自ら名乗りながら、どうお金を稼いでそれをいかにして愛する担当に使っているかを、こぞって投稿していた。

ぴろよ氏はそうした投稿をチェックする過程で「りりちゃん」の存在を知ることになる。

頂き女子りりちゃんこと渡邊真衣 本人SNSより
頂き女子りりちゃんこと渡邊真衣 本人SNSより
すべての画像を見る

「当時、りりちゃんは毎日配信していて、とにかく面白かった。もう印象としては〝すごいヤツが現れた……〟ですね。コインロッカーに大金を置いていたら、おじさんに盗まれた、とかエピソードが全部ビビッドだった」