ジャンル外の人との化学反応で、水族館はもっとおもしろくなる

荒俣 水族館の展示の見せ方に広がりが出てきているということについてはどうお考えですか?

なんかの菌 確かに、最近の水族館の映像や照明はすごいですよね。私は具体的には存じ上げないのですけど、いまも水族館は、違う分野の方からいろんな意見を聞きながらやっていると思うんですね。でもそれは、現場の意図とかけ離れている可能性があって。

荒俣 いまの現場とは、だいぶ方向が違いますよね。

なんかの菌 そうですね。やっぱり飼育員は飼育に力を入れていて、映像や照明を使うような見せ方にはそこまで興味がない人が多いかもしれません。

荒俣 その意味ではね、なんかの菌さんがこういうコミックエッセイ本を出すっていうことは、一種の新しい「視覚の開拓」だと思うんですよ。これは非常に重要なことです。少し違う視点から水族館を見せるという点では、紫の照明の水槽を生み出したのと同じだと思うんです。

何の生きものを担当しているかによって性格が違うと思う、というなんかの菌さん。それぞれの特性を、飼育員に野球をさせるという「空想科学まんが」で描いた 
©なんかの菌/集英社インターナショナル
何の生きものを担当しているかによって性格が違うと思う、というなんかの菌さん。それぞれの特性を、飼育員に野球をさせるという「空想科学まんが」で描いた 

©なんかの菌/集英社インターナショナル

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なんかの菌 ありがとうございます。

荒俣 以前水族館のイベントでなんかの菌さんにお会いしたときも、飼育員の方々と楽しく話をされていたじゃないですか。ああいう環境が、これからの水族館の内部に必要じゃないかなという気がしていまして。

やっぱり水族館はエンターテインメントというか、この水の世界の、その衝撃的なものをどうやってコンスタントにリフレッシュしていけるかが大事なんですよ。そうすると、いま水族館を構成しているのとは違う種類の人たちが必要になってくるんじゃないかと思います。

だから、なんかの菌さんみたいに、水族館の外から水族館に関わる人が出てきたということは、水族館をリフレッシュしていくなかでの一つの先駆けだと思っていて。ある意味ではなんかの菌さんのような存在が、本当に大切なものっていうふうになりますから。頑張ってね。ぜひ。

なんかの菌 水族館業界に貢献したいと思って今回の本も書いたので、そうなったら本望です。

水族館飼育員のただならぬ裏側案内
なんかの菌
水族館飼育員のただならぬ裏側案内
2025/7/4
1,650円(税込)
128ページ
ISBN: 978-4797674668
『水族館飼育員のキッカイな日常』の著者、なんかの菌氏が贈る!
水族館を味わいつくす、水族館愛120%の4コマコミックエッセイ!

何もいないように見える水槽、餌やりをめぐる飼育員と生きものの攻防、海獣ライブのカッコいいサイン出し、建物の裏に見える極太の配管――。
水族館の、ともすれば見過ごしてしまうようなところも、その裏側を知ったら足を止めずにはいられない!

本書では、海水エリア、淡水エリア、海獣エリア、バックヤードと、実際の水族館を歩いていくように、思いもしないような見どころや裏側エピソードを紹介。気分はまるで水族館探検だ。
一生懸命生きている生きものたちも、愛と情熱をほとばしらせ奮闘する飼育員や職員たちも、水族館を成立させる水槽や配管たちも、この本を読み終えたら、すべてが愛おしくてたまらなくなる。 ようこそ、水槽の奥のディープな世界へ!

◎カバー裏に架空の水族館 「ただならぬ水族館」のパンフレットあり!

【本書の内容】
1 海の中へようこそ
2 魅惑の淡水世界
3 海獣のくらし
4 STAFF ONLYの向こう側
amazon 楽天ブックス セブンネット 紀伊國屋書店 ヨドバシ・ドット・コム Honya Club HMV&BOOKS e-hon