水族館で、リアルでしかできない体験をする
荒俣 なんかの菌さんも多少アイデアがあるんじゃないですか? 本にも少し書いていますよね?
なんかの菌 そうですね。最近の水族館はやっぱり視覚を重視した空間のつくり方がすごいんですけれど、私はいわゆる写真映えっていうのは個人的にはそこまで興味がなくて、そこじゃないなとは思ってはいます。
でもたとえば、ただ生き物の生態を見せるだけでお客さんを集められるのかって言われると、いまは自信がないです。
荒俣 まあ大人は何を見ても、あんまり本気で驚かないだろうから、子どもにインパクトを与える要素が水族館にあるかどうかかなと思うんだけれども、そのあたりはどんな考えをお持ちですか?
なんかの菌 やっぱり、体験が大事かなとは思いました。
荒俣 うん。それはそうですね。
なんかの菌 いま、もうすでにやっている園館が多いですけど、触ったり餌をやったりももちろんありますし。ほかの形で、ただ見るだけじゃなくてお互いに何か関係性が生まれるというような形がいいかなと思っています。でも、じゃあ具体的にと言われると、まだわからないです。
荒俣 なるほど。水族館マニアもちょっとはいるけども、水族館の経営を成り立たせるとなると、主力はやっぱりファミリー層ですよね。それで子どもたちって、基本的には何か衝撃を与えないと、おもしろさに目覚めるっていうことがないんですよね。じゃあどんな衝撃があるのかっていうのがひとつの勝負どころだと思う。
なんかの菌さんのお話を聞いていると、何か可能性は見つかりそうだっていうふうに聞こえたんだけど。
なんかの菌 私は、いまは飼育員ではないので、あくまでも外部の立場からっていうことにはなってしまいますが、イラストやデザインで水族館に関わらせていただいていて、子ども向けのクイズシートみたいのをつくったりするなかで、やっぱり子どもを引き入れたいっていうのはありますね。
荒俣 そうですね。水族館をどういう場にしていくのかという問題をメインに考える人って、これからは飼育とか生物専門の人じゃなくて、もっと別の領域からやってくるんじゃないかという気がします。別の領域から水族館業界に入る人が、いまの子どもたちや若い人から出てくるといいですよね。