日本屈指の“カオス”な水族館とは? 元飼育員&荒俣宏がこっそり明かす水族館のただならぬ「裏側」
暑い夏には、涼しくて水の世界を感じられる水族館に行きたくなる。イルカやペンギンは人気の生きものだが、水族館のおもしろさはそれだけにとどまらない。
元水族館飼育員の視点で、水族館の思わぬ見どころや裏側のエピソードを描いた4コマエッセイ『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』の著者・なんかの菌さんが、博物学の大家で自身も水族館のディレクターを務める荒俣宏さんと、水族館の魅力について語り合った。
水族館、行ったらどこを見るべき?
荒俣 注目してほしいのは、全体的なつくりですね。僕が子どもの頃にはじめて水族館を見ていちばん驚いたのは、その眺めだったんです。ふつう、我々人間は陸上にいるから、水の中は水面の上からしか見られない。でも水族館は水の中をそのまま陸上にもってきて、それを横から見られるというすごさがある。そういう異世界体験を、いまの水族館はどうつくりだしているのか。
水の中のようすを陸上で見られるという視覚の衝撃が、水族館のおもしろさの根底にある。水槽の形や内装など、どんな工夫でいまの水族館は異世界をつくりだしているのだろうか ©なんかの菌/集英社インターナショナル
海の中を感じさせる水槽とか水族館のつくりそのものでもいいし、海の中じゃなくてもいいんですけど、あの異世界の眺め、宇宙船から覗いた宇宙の眺めのような、視覚のショックを体感してほしいですよね。
個々の水槽を見てきれいだなとか、おもしろいなっていうのはもう誰でも体験するんでしょうけど、最後に全部回って、一体どのぐらい異世界にいたのか、そういう空間がどこかにあったかどうか。意外にも、この水族館はトイレが異世界だったとか、そういうこともありえますよね。それでもいいんですよ。見どころというピンポイントじゃなくて、異世界としての水族館を体験してほしいです。
なんかの菌 私はミクロな視点として、飼育員の制服ですね。個人的にも見るのがめちゃくちゃ好きなんです。機能性が詰まっていて、最小限必要なものだけを持ち運べるポケットとかがあって。水温計だったり、ホイッスルだったり、持ち運ぶものはなんの生きものを担当するかによって違うんです。そういう出で立ちの違いを見てほしいと思います。
飼育員の制服を注視している人は、あまりいないのではないだろうか。なんかの菌さんによると、飼育する生きものに適したように工夫されている服もあるという。水族館に行ったらぜひ気をつけて見てみたい ©なんかの菌/集英社インターナショナル
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荒俣 今回の『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』にも描いてあるけど、水族館の人が手づくりしたいろんな道具とかがあるでしょう。ああいう、手づくりの道具を見せてその使い方を実演したら、案外おもしろそうですよね。「これで何をやるでしょう?」と見せるとかね。飼育員自作の道具も、水族館では注目です。
2025/7/4
1,650円(税込)
128ページ
ISBN: 978-4797674668
『水族館飼育員のキッカイな日常』の著者、なんかの菌氏が贈る!
水族館を味わいつくす、水族館愛120%の4コマコミックエッセイ!
何もいないように見える水槽、餌やりをめぐる飼育員と生きものの攻防、海獣ライブのカッコいいサイン出し、建物の裏に見える極太の配管――。
水族館の、ともすれば見過ごしてしまうようなところも、その裏側を知ったら足を止めずにはいられない!
本書では、海水エリア、淡水エリア、海獣エリア、バックヤードと、実際の水族館を歩いていくように、思いもしないような見どころや裏側エピソードを紹介。気分はまるで水族館探検だ。
一生懸命生きている生きものたちも、愛と情熱をほとばしらせ奮闘する飼育員や職員たちも、水族館を成立させる水槽や配管たちも、この本を読み終えたら、すべてが愛おしくてたまらなくなる。 ようこそ、水槽の奥のディープな世界へ!
◎カバー裏に架空の水族館 「ただならぬ水族館」のパンフレットあり!
【本書の内容】
1 海の中へようこそ
2 魅惑の淡水世界
3 海獣のくらし
4 STAFF ONLYの向こう側