「テレビ局だけが業界ごと消滅してしまった」

ここから分かることは、昔と今とで学生の就職に関しての志向はさして変わっていない、ということです。昔人気だった企業は今も人気で、多少の企業の入れ替わりはあっても、大きな違いはありません。

要するに、「テレビ局だけが業界ごと消滅してしまった」、ということなのです。産業の栄枯盛衰は世の常であり、かつて花形であった産業が、気がつけば斜陽産業になっている、という例はいくらでもあります。しかし、10年でこれほど凋落した例を、私は他に知りません。

「就職人気企業ランキング」はあくまで人気投票のようなものであり、実際の学生の応募動向とは異なる点も多々あることでしょう。とはいえ、学生からの人気が大きく下がってしまえば、テレビ局各社の採用活動にも影響を及ぼすことは、避けられないはずです。

いまや就職人気企業100位以内にテレビ局は1社もなし…かつて「就職内定という宝くじに当たれば日本一の給料とりになれる」と言われたテレビ局の凋落_4
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文/今道琢也

『テレビが終わる日』(新潮社)
今道琢也
『テレビが終わる日』(新潮社)
2025年6月18日
968円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4106110917

フジテレビをめぐる問題でテレビ界は大揺れだ。しかし、業界全体の凋落は今に始まったことではない。広告収入はネットの半分に落ち込み、まったくテレビを見ない若者が急増、就活人気ランキングでは今や 100位圏外という。反転攻勢をかけようにも、個人の嗜好に強く訴えるネットのコンテンツには歯が立たず、といって海外展開も難しい。かつての「メディアの覇者」に未来はあるのか? データを駆使して徹底分析。

【目次】
第1章  テレビ離れはここまで進んだ
いずれ誰も見なくなる?/国民16%がリアル視聴をやめた/録画でも視聴時間を補えない/激減する10 代、20 代の視聴/7割以上がネット動画を優先テレビ番組は「補欠要員」に

第2章  落ち込む収入、広告はネットの半分に etc.
供給量が増えれば価格は下がる/人口減少が経営を直撃/海外への進出も困難/系列を超えて進む効率化 etc.

第3章  就職人気ランキング100位から消滅
マスコミの中でも取り残される/民放連も指摘する採用難/今も好待遇なのだが…/「すごくブラック」「落ち目な感じ」 etc.

第4章  テレビへの信頼性はなぜ落ち込んだのか
やらせ、捏造、誇張、切り取り/「世界の中心」という錯覚/ネタ探しに追われる日常/飲み会費用38万円を経費として精算/テレビは「既得権者」/最後の「護送船団方式」 etc.

第5章  テレビからネットへ、なぜ主役は交代したか
ネット動画の多様性/嗜好に合ったディープな内容/中途半端さはテレビの宿命/パーソナル化は止められない/技術革新による淘汰 etc.

第6章  テレビに残された優位性はあるのか
ネット企業進出で崩れる優位性/国際スポーツ中継はどうなる/AIによる動画生成の衝撃/競合品が無限に生産される etc.

第7章  テレビが終わる日
船底に穴が空いたタイタニック/20年後の衝撃的な未来像/「岩盤支持層」の入れ替わり/「鉄道会社」型の企業に/テレビなき時代は来るか etc.

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