​​「今日は立ち入り検査が来るらしい」​​同業者たちの対応と協力​ 

​​ディスペンサリー同士の横のつながりは強い。Ken氏によれば「今日は当局の立ち入り検査が来るらしい」といった情報は、同業者間で共有されており、その対応について相談し合うこともあるという。​

​​「競争相手っていうより、同じ事業者同士で守り合ってる感じですね。特にカオサンは、助け合いの空気が強いと思います」​

​​他店の動向を見て販売方針を調整する場面もある。特にエディブルの販売停止については、業界全体が慎重になりつつあり、Ken氏も「他店がやめたからうちも」と足並みを揃えた。​

​​ピーチパンティーズのドリンクメニュー。かつてはTHC(大麻成分)追加の表記があったが、規制強化に伴い現在は削除されている​
​​ピーチパンティーズのドリンクメニュー。かつてはTHC(大麻成分)追加の表記があったが、規制強化に伴い現在は削除されている​

​​処方箋が“チケット化”する未来​ 

​​今回の規制強化により、店舗での購入には医師の診断と処方箋が必要になる。その影響で、ディスペンサリー側も新たな対応を迫られている。医師との提携や、オンライン診断による処方箋発行などが、現実的な選択肢として業界内で検討され始めたのだ。​

​​「すでに、近隣クリニックと連携した販売形態や、店内での診断体制をどう整えるかは検討しています。オンライン診断も選択肢のひとつです」​

​​業界全体で模索が続くなか、現場は試行錯誤の真っただ中にある。処方箋制度が本格的に導入されれば、従来の“店頭で誰でも買える”状況は終了し、“診断を受けたうえで購入可能”に変わる。​

ただ、Ken氏は「500バーツ程度の診断料なら、観光客にとっては“ワンタイムチケット”感覚で受け入れられるのでは」と語る。これは実際にバンコク市内のクリニックで導入され始めている料金体系に基づく見方である。​

さらに、現行の規制案では、一度発行された処方箋は30日間有効で、期間中は1日1グラムまでの大麻が処方される。つまり、診断書を手にすれば観光客でも一定期間は自由に購入ができてしまうのだ。​

​​「逆に言えば、規制が進んでも、それが“手間”にはならないかもしれない。500バーツを払うだけで処方箋が簡単に取れるなら、現場の仕組みが変わるだけで、需要自体は大きくは減らないと思います」​

​​一方で、提供側には新たなコストと体制整備が求められることになり、ここで事業者間の明暗が分かれる可能性がある。​