「中川くんと2(ツー)ショットの巻」(ジャンプ・コミックス第107巻収録)
今回は、葛飾署女性警察官のリーダー格・早乙女リカが、旅行談を盛りすぎて絶体絶命のピンチに陥るお話をお届けする。
本作は、田舎に帰郷したリカの夏の日々を描いた「郷愁(ノスタルジック)の螢小夜曲(ホタルセレナーデ)の巻」「螢里鉄道の夜の巻」(ジャンプ・コミックス第107巻収録)という前後編の後日談となっている。
この旅には両さん、中川、麗子が同行したのだが(両さんはムリヤリついていった)、リカは同僚たちに「中川といっしょに旅行した(そして二泊した)」と話してしまうのだ。願望と見栄からつい口にしてしまったこのひと言を両さんに知られ、真実を暴露すると脅されるハメに……。
本作が描かれたのは1997年。日本でのインターネットの普及率はわずか1.6%で、SNSの原型のようなものが誕生していたものの、 Twitter誕生の9年前、Instagram誕生の13年前のエピソードだ。
だがリカの行動は、承認欲求に駆られてキラキラした自分を演出する、SNS時代の人々の姿に重なるようにも思える。できごとを切り取り、盛り……。両さんが映り込んだ写真を加工して中川とのツーショットにしてしまうくだりなどは、極めて現代的な描写だ。
もっともリカの撮った写真はスマホではなくフィルムカメラによるもので、ネガフィルムを加工したのもアプリを使ってではなく、中川の会社によるものだ。
リカは、物怖じしない性格で行動力があり、ブサメンでがさつな両さんが大嫌いで、イケメンの大富豪な中川にはゾッコン。そして恋人持ち&振られた描写まであるという、『こち亀』の女性中ではかなりリアル寄りのキャラクターだ。そんなリカに訪れた災難は、笑いの中にどこかリアルを感じさせるのだ。
それでは次のページから、早乙女と中川の偽装ツーショット写真が巻き起こす騒動をお楽しみください!!