自己資金で赤字続きの運営も選手のため

そのような想いで立ち上げたビオーレ名古屋だが、寿台さんが運営する法人規模では、従業員で構成される実業団を持つことは極めて困難な状況だったという。

実業団の運営は一般的に大手企業に限られている。チームを持つことは、地域社会への貢献によるイメージ向上、試合を通じた宣伝効果、従業員の士気高揚や福利厚生といったメリットがあり、企業にも利益として還元される可能性がある。ただし、これらは資金面での安定性があってこそ成立することであり、小規模な企業にとってはスポーツチームの維持・運営コストをまかなう資金力の確保が課題となる。

ビオーレ名古屋の選手たち
ビオーレ名古屋の選手たち

社会人のスポーツチームでは、選手が活動費を負担するケースもある。個人の出費は年間20万円を超えることも珍しくなく、スポーツへの情熱があっても継続するのは容易ではない。とくに日本の平均給与よりも水準が低い保育士ではなおさらだ。このような背景から、寿台さんは選手に費用負担をさせない方針でチームを運営している。

「用具の調達、遠征費、宿泊代、医療費などで、年間維持費が数百万円もかかります。私たちは強い経営母体もなく、年間予算を簡単に出せる状況ではありませんでした。そのため、当初、資金は私の個人資産でまかなっていました。

遠征コストを下げるために、マイクロバスの運転も担当したりしていましたが、1年目は大きなファミリーカー1台分ぐらいの赤字でしたね(笑)。資金面では切迫した状況が続いていましたが、今年度にようやく赤字が止まる見通しが出てきたんです」