SNSでは、あえてバレーのプレーを見せない戦略を

資金がない中で、継続的なチーム運営を実現するためのチーム設立時から柱としたのがSNSによる情報発信だ。

「SNSでファンを増やすことで認知度が向上し、それが広告塔となって、スポンサーが集まる。さらに保育士の採用や、保護者の方々にも知っていただくことで、園児募集にも好影響があるだろうと考えていました。

SNSでは選手たちの日常の姿を中心に投稿しています。バレーボールのスーパープレーだけを見せても、日本代表やVリーグの選手にはどうしてもかないません。それよりも、選手のキャラクターが伝わるような投稿を心がけ、おもしろい場面が撮れたときだけ共有するようにしています。バレーにあまり興味がない人たちにも親しみや興味を持ってもらえるような発信を意識しています」

その結果、SNSでバズり認知度が広がって支持を獲得した。もっとも再生数が多いYouTubeのShort動画は350万再生を記録しているが、それは現在キャプテンの大城なるみ選手が体調を崩した選手を介抱する内容だ。

練習中の大城なるみ選手
練習中の大城なるみ選手

やはり、アスリートでありながら教育福祉に携わる者としての一面が垣間見える点が支持につながっているようだ。チームが人気になったことで、変化が現れたという。

「人気が出てスポンサーがつくようになって、選手たちも多くの人々に支えられているという自覚が芽生え、感謝の気持ちが強くなっているようです。当初は写真を撮影されるときも、『いま試合後で、化粧も取れているのにどうしよう』と躊躇したり、サインを求められても戸惑ったりしていました。今では自分たちから積極的に時間を作って、暑くても寒くても、汗をかきながらファンに真摯に対応しています」

チームが人気を集め、寿台さんの施設の保育士の採用も増加。さらに、選手たちが勤務する園の子どもの保護者からの反響も良好だという。

「InstagramやYouTubeライブで見たという声や、試合後に仕事をしているのを見て『大変だね』『頑張ってね』という声が本当に多くなりました。2年目には、地域リーグのホームゲームを愛知県武道館で開催し、2日間で保護者のかたが50組以上もお越しくださいました。そこで子どもたちから『〇〇先生!』という声が飛び交うのを聞いて、活力になりましたし、ここまで頑張って良かったなと心から思えました」

今後は、保育士の低賃金解消にも繋げたいと寿台さん。

「グッズが売れた場合には、利益の一部が選手に還元される仕組みになっています。ゆくゆくは、保育士の給料をベースに得意分野でインセンティブを得ることで、年収1000万円の保育士を輩出したいです。そうすれば、日本中で保育士を目指す人も増えるだろうと考えています」

取材・文/福永太郎