悪しき通例「日当制度」
2月に入ってから私は県、郡、村というそれぞれの行政単位で計3回にわたってインセプション・ミーティングを開催した。このプロセスを経て、ようやく本格的に動き始めることができる。そしてこれらの会議は、援助団体側が主催し、関係者を招集する。
ここからが腹だたしいのだけれど、会議を主催したNGO側が、参加者に対して謝礼を支払うという「日当制度」が悪しき通例となっている。そしてこの日当こそが、権力者の大本命だ。
まずは県での会議だ。ここぞとばかりに援助の甘い蜜を吸ってやろうと集まってくる特権階級の人間にはうんざりだった。
会議の終盤になってようやく顔だけ出し、ハチミツ瓶から手を離さないくまのプーさんみたいに、日当の配給を待つ下級職員。机に突っ伏して深い眠りに落ちる政治家。飲料水だけ受け取って退出する偉そうなマダム。ひとたび会議が終われば、そういった癖の強いキャラクターたちが、大木の根元からしつこく生えてくる雑草みたいにニョキニョキと現れてくる。
「我日当を受け取って当然なり」と堂々とした顔で現金を握り締める恰幅のいい行政職員。
「金額が少ない。他のNGOだったらこの2倍はもらっている」と不貞腐れ顔で私に言い寄ってくる人もいる。
「僕たちはあいにく、小さなNGOなので」と私は切り返す。
「こんな金額受け取れるか! この恥晒しめ!」と別の政治家がカットインして言う。
「申し訳ありません。次はもうちょっと予算が取れたら……」曖昧な返答をする私には、何がどう恥なのか全く理解不能だった。いずれにしてもお金を払っている上に暴言まで吐かれる。どう考えたって割に合わない。
こんな調子で、プロジェクト内容に関心を示す参加者はほんの一握り。彼らにとって会議に参加する真の目的は日当という名のお小遣いだ。お小遣いといっても、ウガンダ政府の公式文書に書かれた金額だと、一番身分の低い行政官が受け取る金額ですら、住民の平均月収を優に上回る。