私たちの政治家は日当を受け取っているじゃないか
脃弱な村人たちと強欲な行政職員を比較してみれば、その皮肉な体型のコントラストは一目瞭然。どうして同じ地域で生まれ育ちながら、こんなにも体型も身につけているモノも異なるんだろう。一方には骨に皮を被せただけのような細い腕を差し出して、食べ物を乞う人がいる。
その隣には、豊満な腕に金色に光る腕時計を巻きつけたエリートがいる。特権を持った人間が、援助によってどれだけ肥えてきたんだろう。
日当制度は、援助業界における悪しき習慣の1つだと思う。援助を本当に必要としている住民のためのプロジェクトなのに、なぜ私たちは何度も会議を開いては、毎回のようにエリートに対して合計数万円にも及ぶ日当を支払わなければならないんだろう?
特権を持った現地の有力者を前に、私たちNGOは打ち出の小槌化し、彼らはますます富を蓄える。このような援助の構造は本当に憎い。「必要経費」として数万円の日当が、特権を持った人間たちに吸い取られていくことに、私はどうしても納得がいかない。
そして日当という制度は、村の中にもしっかりと浸透している。
県の次は郡・村だ。会議は村の広場の大木の下で行われ、村の長老などをはじめとする十数人の地域住民も参加していた。大きな木の近くでは、女性たちが樽に入ったアブティア(ソルガムを発酵させて作る地酒)を売っていて、鼻をつくような特異臭が広場には漂っていた。
はじめこそ十数人だった会議の参加者も、アブティアを買いに通りかかった村人たちが次々に腰を下ろし、会議の終盤には50人ほどに膨れ上がっていた。
会議が終わり、腰を上げようとした時、1人の女性が私のことを睨んでいたので目が合った。
「私たち村人が受け取る日当はないのかい?」と彼女は尋ねた。私は少しだけムッとしながら言った。「僕たちの役割は、日当をばら撒くことじゃないんです。これから始めるプロジェクトの方が、あなたたちにとってはより重要だと思っています。どうでしょうか?」
「でも、私たちの政治家は日当を受け取っているじゃないか」と女性は怒りを交えながら言った。「同じ会議の参加者なのに、どうしてこうも違うんだい?」