野球観戦で14万円…格差社会の勝ち組しか観にいけない”大谷”ドジャース戦! インフレの一方カリフォルニアの35%は家計が赤字のショック
大谷翔平の活躍に沸く、MLBそしてロサンゼルス・ドジャース。野球はかつて「アメリカ最後のお手頃観戦スポーツ」だったが、今や家族4人でのドジャースの試合の観戦には平均400ドル近くかかるという。この背景には、アメリカ社会で深刻化する経済格差と高インフレがある。
在ロス広告代理店「MIW」社長の岩瀬昌美氏が、華やかな大谷選手の活躍の裏側にある、アメリカの厳しい現実を自身の体験を交えてレポートする本稿は岩瀬昌美氏著『大谷マーケティング』(星海社新書)より一部抜粋、再編集してお届けする。
アメリカの18~29歳の約半数は親と同居
ピュー・リサーチ・センターによると2020年時点でアメリカの18~29歳の約半数は親と同居しています。これは1940年以来の高さだといいます。また親と同居しないにしてもワンベッドルームに4人で住むなどして、なんとか寝床を確保している人の話も聞きます。
そんな状況で2025年1月、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任しました。トランプ氏は就任直後から世界各国に対して関税引き上げを発表し、世界経済は大混乱しました。中国などから多く製品を輸入するアメリカにおいては、今後インフレが起きることが予測されています。
それによって困るのは貧困者です。貧困者が生活に頼っている安価な製品の多くは輸入品だからです。このような状況にエコノミストなどはアメリカが本格的な景気後退(リセッション)に入る可能性を示唆しています。また、スタグフレーション(景気停滞とインフレの同時進行)を起こすことも十分にあり得ます。
カリフォルニアの35%「基本的な生活費を賄うのに十分な収入がない」
すでにその兆候は見えており、配送サービスのUPSは2025年4月に2万人規模のレイオフを発表。同月、半導体大手のインテルも20%超のスタッフの削減を計画しているとブルームバーグが報じました。2024年にも当時の従業員の15%を削減していたので、追加のリストラです。
実際、家計収支が赤字の家庭も珍しくありません。NPOの「ユナイテッド・ウェイズ・オブ・カリフォルニア」のレポートによると、カリフォルニア州全体の世帯の35%(380万世帯以上)が基本的な生活費を賄うのに十分な収入がないことがわかりました。
大谷の活躍はたしかに華やかで、彼の活躍に伴ってビッグマネーが動いているのを見ると、とても景気のよさそうな国に見えるかもしれません。しかし、足元の景気や庶民の生活は必ずしも素晴らしいものではないのですね。
文/岩瀬昌美
大谷マーケティング 大谷翔平はなぜ世界的現象になったのか?
岩瀬 昌美
2025/7/16
1,375円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4065406441
野球界と広告界、2つの世界を制覇した大谷翔平の秘密に迫る
大谷翔平のメジャーリーグでの活躍は毎日のようにニュースになり、多くの史上初記録を生み出しています。しかし、大谷の本当のすごさは野球界のみならず、広告界も制覇したことにあります。大谷は年俸を超える年間100億円もの広告を獲得し、今や日本では彼の広告を見ない日はなくなりました。そしてアメリカでも大谷翔平は社会現象となりつつあります。一体なぜ大谷は前代未聞の世界的熱狂を巻き起こしたのか、その背景にはいかなるマーケティング戦略があったのか――アメリカでマーケティングに携わる著者が、実体験を交えながら考察します。
*以下、本書目次より抜粋
まえがき ロサンゼルス在住マーケターから見た大谷翔平
第1章 誰が大谷翔平に熱狂しているのか
第2章 大谷はエンゼルスに何をもたらしたのか
第3章 エンゼル・スタジアムを彩った広告たち
第4章 ドジャース移籍で大谷のバリューはどれだけ上がった?
第5章 大谷翔平広告の批判
第6章 大谷翔平から見るアメリカ経済
第7章 大谷翔平をマーケティングで活かす方法
あとがき