球場に入ることができるのは格差社会の勝者だけ
このように庶民にとっては高嶺の花のドジャース観戦です。現状、観戦しに球場に入ることができるのは格差社会の勝者だけです。
他方で富裕層にはシーズン中に何度も来る人が多くいます。そのためエンゼルスなどとは違い、ドジャースは野球観戦を促すようなプロモーション広告を球場外ではあまり実施しません。
オンラインではボブルヘッドデーなどイベントがある試合に関する広告ならたまには見ますが、マス向けのテレビ、ビルボードなどオフラインの広告はほぼ見られません。ドジャースの球場チケットはリピーターに支えられているため、球場内での告知や自社サイトプロモーションだけで十分売れるからです。
シンクタンク「センター・オン・バジェット・アンド・ポリシー・プライオリティーズ」の調査によると、ここアメリカでは最も裕福なトップ1%の人口が、社会全体の30%に及ぶ富を保有しています。
そして人口のボトム50%の資産は社会全体の富の4%にも満たないのです。そういった人たちは貯金はほとんどなく、株などを持っている人も皆無に近いです。
アジア人へのヘイトクライムの根底
ちなみにアメリカ連邦議会予算局のレポートによると、アメリカで上位10%に入る世帯の富は、1989年から2019年で約60兆ドル(約8700兆円)増えた一方、下位半分の世帯は、同期間でわずか1兆ドル(約140兆円)増です。裕福な者がより裕福になっているのが現状です。
本章ではこのように、一見すると華やかな大谷活躍のニュースの裏で、格差やインフレに苦しむカリフォルニアやアメリカのリアルな経済状況について、私の生活実感も交えつつお伝えします。そんな苦境の中で、「なぜ大谷が愛されるのか」をより立体的に理解する助けになればと思います。
アメリカでは人種間の経済格差も目立ちます。黒人の平均収入は白人の60%に満たない一方で、アジア系は白人を25%も上回っています。
アフリカ系住民によるブラック・ライブス・マター(BLM)運動がアメリカで盛んに行われる中、アジア人に対するヘイトクライムの発生も問題になりました。その根底には、このような収入格差もあるとされております。