「家を買ってしまった人と寮で暮らす人とでは人生設計も変わる」
追浜工場で小型車「ノート」と「ノートオーラ」の生産に携わるAさんが職場の空気を話す。
「生産シフトは通常8時間のところが30分短縮されています。シフト中に200台くらいつくるかな。そのシフトが1日2交代で回っています。以前に比べれば稼働率はものすごく落ち込んでいます。この生産規模では耐えられないだろうと思っていたので、読売の報道が出た時も『まあ、そうなるだろうな』という感じでした。
なので、正式に工場閉鎖を言われたのは今日ですけど、『転勤の希望には沿う』とは会社から言われてきました。九州の工場だけでなく関連会社も選択肢としてあるみたいです。まだ2年あるから考えますが、この近所に家を買ってしまった人と寮で暮らす人とでは人生設計も変わってくるでしょうね」(Aさん)
日産の車が好きで同社に入ったというAさん。今の苦境の原因に話が及ぶと、
「中国のBYD(の電気自動車)が出てきたり、アメリカの関税問題もそうですけど、自分らが考えているのよりも変化に追いつけていなかったのかと思いますね。
“e-POWER”(日産独自のハイブリッドシステム)もありますが、他のメーカーに比べるとやっぱり開発に時間がかかったところがありますし、似たり寄ったりな車になっていたというのもあるかもしれません。今は“大企業でもこんな感じなんだな”と思っています」
と淡々と答えた。いっぽう営業に携わるBさんは会社の態度に怒りを抑えきれない。
「ホンダと合併するとかしないとか言っていたときも、会社はいつも急に知らせてくるんです。それに社内では猛反発が出ています。工場がなくなるのでは、という噂はもちろん回っていましたが、不意をつく発表に振り回されることで会社を信用できないと嘆く人もいます」(Bさん)
工場閉鎖が及ぼす影響の大きさを考えれば、会社の説明は雑ではないかとの思いがあるそうだ。
「閉鎖される工場だけでなく原材料を納入している業者も含め、十数万人の仕事がなくなったり減ったりするのではないでしょうか。工場で働く人の新しい勤務先はどうなるのでしょう。2年先の閉鎖までに間に合うのっていう感じです。
方針は決まりしだい知らせると会社は言いますが、決まるまで不安でたまらないと思います。宙ぶらりんに置かれた人に九州への転勤を打診したら嫌がられて人材が流出することもあり得るでしょう。
売り上げが良くないのは事実です。でも本社は一等地にあるし、広告も有名芸能人ばかり起用していて、経費を削減できるところは多くあるのではないかと思います。今回の策が収益改善のために本当に妥当なのか知りたいですが、具体的な情報を私たちは知ることはできません」(Bさん)