街の米屋「安いコメは全然ないからどうしても売る時は4000円台」
街のお米屋さんはこの苦境をどう乗り切ろうとしているのだろう。大田区で73年続く米屋の2代目店主は苦笑まじりにこう語った。
「問屋からはいまだに『新米が入るまでは厳しい状況が続く』と言われているよ。だからニュースにあるようなブランド米山積みなんてことは、問屋頼りの小さな米屋には起きないと思うよ。今あるコメだって半分は買い手が決まっているものだからね。
スーパーなんかに急に出回るようになったのは、ある程度の量を確保していた問屋が備蓄米の放出で、現状の新米が古米になる秋までに売ってしまいたいって考えが出てきたからだろうね。
今ウチの店は必要な量こそ確保できているけど、産地や品種については問屋次第になっているよ。安いコメは全然ないからどうしても売る時は4000円台とかになってる。新米が出るまでに値段が下がるかは、この状況だとなんとも言えない。
ただでさえわざわざ街の米屋でコメを買う人が少ない中で、もう1年くらいずっと値上がりが続いてるから、今年の利益なんて今までないくらい少なくて苦しいんだよ。俺も歳だから、こんなんじゃ新米の収穫時期まで米屋を続けられるかわからねえな、ははは」
同店は住宅街にあって宅配がメインで、税込で5キロ4428円の米が20袋積まれていたが、すでに半分以上は買い手がついているものだった。古くからの個人客が中心のため、注文に応じて必要な量だけを用意するといったスタンスだ。
そのため大量購入という随意契約の条件には合わないため備蓄米の取り扱いはない。
大田区内の別の住宅街で60年続く米店も、問屋頼みの苦しい立場にあえいでおり、男性店主はあきらめにも似た表情を見せた。
「長く仕入れている問屋がスポット契約を活発にやるところではないので、ウチには多くのブランド米が入ってくるようなことはないです。今ここで新しい問屋に切り替えるようなことをすると、長く続いた店と問屋の信頼関係が崩れて今後何かあったときに頼れなくなる恐れがあるので、下手に乗り換えることはできないです。
まあ現状のお客さんは昔からウチで買ってくれているお得意様メインなので、必要な量が間に合っていれば不満はないです。結局、個人店となると問屋との信頼関係が重要なんです」
店内にはたくさんの商品棚やテーブルがあったが、入り口近くのテーブルに4種類の国産ブランド米が3袋ずつ並んでいただけで、あとは目につく商品はなかった。この店も随意契約の対象外のため備蓄米の販売は行なっていなかった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班