主戦場は、全国に32ある定数1の「1人区」 

この精神こそが、政治的無関心や思考停止の状態を打ち破り、有権者に主体的な判断を促す起爆剤となる。自民党の不正や失政を批判することは、民主主義の番人たる野党に課せられた道徳的に正当な責務でもあるのだ。

主戦場は、全国に32ある定数1の「1人区」である。ここでは勝者が議席を総取りするため、野党が候補者を一本化できるかどうかが勝敗を決定づける。2022年の前回参院選では、自民党が32の1人区のうち28で勝利し、圧勝した。

自公政権の過半数割れは、政治変革のゴールではなく、新たな政治力学が生まれるスタートラインに過ぎない。有権者は、その先の政界再編シナリオまでを読み解き、賢明な一票を投じる必要がある。

野党にだって不安な要素は多い。維新は創設者である橋下徹氏の強い影響下にある吉村洋文氏と前原誠司氏が「年収の壁、撤廃」という大型減税案を潰し、教育費の全額税金負担で石破政権と手を結んでしまった。

参院選で、自公政権を過半数割れさせる方法…鍵は32ある1人区にあり「石破政権は国民が望む減税をしない」経済誌元編集長 _3
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各党党首の発言の裏にある本音と戦略 

選挙に勝つために減税を主張する政党は多いが、維新はその典型例だろう。維新から国民民主に移って立候補をしている足立康史候補は社会的リベラルだと自分の立ち位置を明示し、増税や国民負担増への意欲を隠そうとしていない。

参政党も党首をはじめとした党員たちの非科学的な主義主張が気になってしまう人も多いのではないか。逆に公明党は衆院選以降、減税を強く主張してきたのであるから、自民党批判とは濃淡があって然るべきであろう。

全ては与党の過半数割れを目指すという前提はあるものの、個々の選挙区では単純な判断がしにくいところではあるから、あとは有権者が各々の良識や信念にしたがって審判を下すということになるだろう。

今回の参院選は、有権者が単に政党を選ぶだけの選挙ではない。自公過半数割れの後に、どのような政治の形を望むのか。有権者一人ひとりが、自らの理想とする未来図を描き、それを実現するための駒としてどの政党、どの候補者が最もふさわしいかを見極める「政界のプロデューサー」としての役割を担っている。

各党党首の発言の裏にある本音と戦略を冷静に分析し、自らの一票がどの未来の実現に繋がるのかを深く洞察することが、日本の政治を前に進める唯一の力となる。

文/小倉健一