パッと見でわからないが紙質・重さも違う、ルーペでみると… 

集英社は2021年ごろから、人気漫画の第1話が収録された週刊少年ジャンプやコミックスの海賊版などが、フリマアプリなどで販売されていることを覚知していた。

2021年2月、『鬼滅の刃』の全23巻が違法に印刷された海賊版がインターネットで販売されているとして、自社のホームページで注意喚起。海賊版『鬼滅の刃』のコミックスは、本物より薄いものの、帯まで正確にコピーされていた。

今回の「海賊版ジャンプ」もじつに巧妙につくられていた。取材班は、『NARUTO』の連載1話目が掲載された「海賊版ジャンプ」を実際に手にしたが、広告ページやアンケートハガキも再現されていた。

だが、正規品と持ち比べてみたところ、重さの違いは明確で、海賊版は正規版より約1.3倍重く、さらに紙質にも違いがあった。

アンケートはがきも再現されていた(撮影/集英社オンライン)
アンケートはがきも再現されていた(撮影/集英社オンライン)

集英社の知的財産課はこう解説する。

「日本の漫画雑誌は、古紙を使っています。いっぽうで、海賊版は古紙を使っておらず、ルーペでみると違いが一目瞭然にわかります。古紙を使う技術は出版社が依頼する印刷所特有のものなので、真似はできません。インクも異なり、漫画雑誌の表紙は6色で色が作られていますが、海賊版は4色。色が単調なのが特徴です。

また『ドラゴンボール』の連載当初のころはホッチキスどめの時代だったにもかかわらず、海賊版はのり付けされていたりもする。ほかにもページ下の部分に印刷ミスがあったり、余白の幅が一定ではないなど、印刷ミスが見られたりします」(集英社知的財産課)

しかし年々、海賊版の印刷技術は上がっている。「パッと見でわからないこともある。漫画雑誌の海賊版について、1部だけの印刷は考えにくい。1000部単位で印刷をして国内でばら撒いている可能性もある」とある出版関係者は話す。

印刷ミスも目立っていた(撮影/集英社オンライン)
印刷ミスも目立っていた(撮影/集英社オンライン)

「海賊版のコミックスや漫画雑誌は、今回の事件のように中国などの国外でつくられているケースが多く、国内の“売り子”に渡してフリマアプリなどで販売させている。出品の際には、正規品の写真を掲載する者もおり、出品情報で海賊版だと見抜けないように手口は巧妙化している。海賊版を買わされた被害者の多くがフリマアプリの運営会社に相談するものの、対応してもらえず、結局は泣き寝入りをするケースも多々ある」

集英社の知的財産課は「これからも警察と連携し、海賊版の撲滅に力を入れていきます」と最後にコメントした。漫画ファンの思いを踏みにじる行為は絶対に許されない。

陳容疑者が営んでいたリラクゼーション店
陳容疑者が営んでいたリラクゼーション店
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班