ブームは下火? 昆虫食の自販機の現在
ここまでは専門的な自販機を回ったが、続いて訪れたのは、高田馬場にある食べ物の自販機。だが、その品ぞろえはただものではない。並ぶのは、コオロギやイモムシといった“昆虫食”だ。
運営するのは、同じ敷地の居酒屋・米とサーカス。高田馬場と渋谷に展開する同店はジビエと昆虫食が目玉で、2019年から自販機も始めた。
「店で扱うジビエの種類が増えていき、2015年頃から昆虫食も出すようになったら、『こんなに求められてたんだ』と驚くほど反響がすごくて! 当時は店舗がここだけで営業も夜のみだったので、『昼も買いたい』『お土産にしたい』との声に応えられるよう、ここと秋葉原に自販機を設置しました。
売れ行きは秋葉原のほうが良かったんですが、設置場所の都合で撤去し、今はここだけです。台数は増やしたいんですが、補充もスタッフでやるので、近場以外だと難しくて」(PR担当・宮下慧氏、以下同)
好評を受けて導入した自販機だが、昆虫食は数年前の注目が一変、昨今は関連企業の破産や撤退が相次いでいる。はたして売れているのか、尋ねてみると……。
「この1台で月に100~120個くらいは売れてます。でも、昆虫食自体ちょっと元気がないですね。ブームのときは、わっと買いに来る方が多かったんですが……。
今は客層が変わって、YouTubeで知ったという海外の方がけっこう来られます。日本人でも、夏休みや春休みなど、東京に来る人が増える時季は特に売れますね」
売れ筋を聞くと、「まんべんなく売れているんですが、安定して人気なのが『タガメサイダー』、海外の方がよく買って行くのは、いろいろな昆虫が入った『バグミックス』です」とのこと。おすすめの食べ方は、「スナック感覚でそのまま食べられます」などと教えてくれた。
そこで、人気のタガメサイダーと、ご当地シリーズから広島産コオロギを購入。サイダーのアテにコオロギを楽しんでみた。
おそるおそるコオロギを口にすると意外にも、広がるのはアーモンドの風味。裏面を見ると、エサにアーモンドを使っていた。
その効果か虫の臭みはなく、感覚はミックスナッツに近い。たしかにスナック感覚だ。
続いてはサイダーを飲んだが、こちらはさらに違和感がない! タガメエキス入りだが感じるのは梅のような風味で、ラムネと言って出されれば、疑いなく飲んでしまうような味だった。
昆虫食について宮下氏は、「栄養価が高く環境にも優しい食材なので、もっと広まると嬉しいです」と語っている。味は悪くないため、先入観さえ払拭できれば普及するかもしれない。
都内だけでも、これだけユニークな自販機に遭遇できるとは……。全国には、さらなる変わり種の自販機があることだろう、お近くにある方はぜひ試してみては。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班