黄色と亀、縁起が良さそうな見た目の自販機で売っているのは……
業界御用達の自販機は、山手線で一本の新宿駅周辺にもある。訪れたのは、都庁などの高層ビル群にたたずむ、亀のイラストと黄色い外壁がひときわ目を引く作業服店。
敷地内の自販機で売られているのはなんと、現場作業用やタクシー運転手用の手袋。かなり客層を絞った商品だ。
運営する萬年屋の取締役・八木智子氏いわく、同店は「1番都心にある作業服店」とのことで、新宿駅周辺の工事や再開発事業の関係者がよく訪れるという。
自販機は昨年10月に設置したばかりで、愛三電機同様、ニーズをふまえた結果だという。同店は18時閉店、土・祝定休のため、店舗営業だけでは商品を手に入れにくい客もいたことから導入したそうだ。気になる反響を聞いてみると……。
「当初からラインナップに入れている寅壱タオルはよく売れますね。外国のお客様が多いので、漢字の入ったものが人気なんだと思います。まだ8ヶ月ほどですが、商品は2~3回入れ替えました。利用しなくても、自販機自体の写真をSNSに上げてくださる方も多くて、けっこう宣伝になってます」(八木氏、以下同)
同自販機のニッチさを際立たせるタクシー手袋も、当初からのラインナップだという。
じつはこの周辺、都庁などがあるためか、かなりのタクシーが走っている。こうした環境もあり、タクシー手袋は店頭の売れ筋商品で、八木氏も「消耗品に近く、使っていると汚れたり破けたりします。周辺にホームセンターや作業服店もないので、需要に繋がっているのかと」と語っている。
とはいえ、店側にもわからない“謎”もあるそうで……。
「じつは、店頭では売れているんですが、自販機ではあまり売れていないんです(苦笑)。この差がなぜかは我々もわからなくて……。まだまだ自販機の存在が知られていないんでしょうか」
この6月、企業では従業員の熱中症対策が義務化され、冷感グッズの需要は増加が予想される。同自販機も取り扱いたいそうだが、そこも“探り探り”とのことだ。
「時季的にも、これから冷感グッズは増やしていきたいですね。ただ、設置してから初めての夏になるので、どういったものが売れるかは本当に探りながらという感じです」
まだ設置から日が浅く、稼ぎを出すのも“これから”といったところの萬年屋の自販機。しかし、八木氏は「売上だけじゃなく、働く人が安全・快適に働けるような商品を考えていきたい」と、利用者のための存在でありたいと語った。