死刑判決確定からわずか1年後に執行 

この事件の犯人、宅間守は死刑判決確定からわずか1年後の2004年9月14日に死刑が執行されています。実は、これほど早い執行は異例です。

殺人、殺人未遂、建造物侵入、銃刀法違反で起訴された宅間。前述のとおり「エリートでインテリの子をたくさん殺せば、確実に死刑になると思った」と犯行動機を語りましたが、池田小は国立大学の附属で、宅間自身が系列の池田中への進学を望んでいたにもかかわらず、家庭環境からそれが叶わなかったとも伝えられています。

子どもたちに対する妬みや嫉妬があったのかもしれません。宅間は法廷でも傍聴席に座る被害者遺族の人たちに聞くに堪えない罵声を浴びせかけ、無反省であることを主張しました。そして「自分の死刑を早く執行しろ!」と騒ぎ立て、法務大臣にも文書でその意志を申し立てていました。

「犯罪史上類を見ない凶悪犯罪」附属池田小事件から24年… 8人の児童を殺害し、自ら死刑を望んだ宅間守、判決確定からわずか1年後の”異例の執行”_3
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異例の早い死刑執行は、宅間本人が控訴を取り下げ、死刑を望んでいたということもあるかもしれませんが、死刑執行をする側(国)からすればこれほどの凶悪犯罪ですから、世論からは反発はないという判断も働いたと思います。

「死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職だ」と言った法務大臣もいましたが、宅間死刑囚は法務大臣にとっては、はんこを押しやすい存在であり、昼のニュースに大臣自身の名前が出る格好のチャンスだったのでしょう。

しかし、その一方で長年執行されない死刑囚もいます。なぜその人たちにははんこを押さないのでしょうか。そこには、目立ちたがりの法務大臣でも躊躇する理由が存在するのでしょうか。それとも、もし冤罪だったとのちにわかった場合、取り返しがつかない汚点を残してしまうことを恐れているのでしょうか。

そして、執行のタイミングも“世間受け”を考えているのではないかとも推測してしまいます。報道をする側は、国家が死刑執行を政治利用するようなことになってはいないかどうかをチェックする必要があると強く感じます。

私自身は、冤罪を生みやすい捜査や裁判所が存在する以上は、死刑制度には反対です。今後、死刑が執行されたとき、マスコミは単に執行された事実だけを報じるのではなく、日本の死刑制度を真剣に考えてみる報道もすべきではないでしょうか。

文/宮村浩高