いつまで「東大卒」を売り物にするのか?
そのほかにも、両親が大学学位を持っていない学生を指す「大学第一世代」に関する論考が収録されている。
「『大学第一世代』を取り上げられたのもよかったです。アメリカでは、“first-generation”は議論され、エリート大学に行けば行くほど、家庭環境などで周囲とのギャップで孤立するという研究結果が出ています。
でも日本ではまだ語られていなかった。東大に入った時点で“勝ち組”とみなされ見えなくなってしまう困難に光を当て、言語化した、とても重要な論考です」
たしかに、東大と「マイノリティ」という言葉は容易に結びつかない。「第二章 東大生の学生生活――『大学第一世代』であるとはどういうことか」担当した近藤千洋氏は、両親とも大卒ではなく、慶應義塾大学を経て東大の大学院に進学。慶應を経てもなお、東大でのカルチャーショックは大きかったのだという。
「東大卒というのは、全然一括りにできない」と本田氏は強調する。それにもかかわらず、社会で「東大卒」のイメージが一人歩きをしていくことへの懸念が、インタビューの間、終始感じられた。
「いつまでも東大卒であることだけを売り物にして生きている人が、メディアでは目立ちます。記憶力やパフォーマンスが“芸”として消費されている。でも、それって知性を何に使っているんでしょうか。私は、ネガティブな目で見ていますね。
あとは政治家や経営者でも、自分の立場を盤石にするための資本として東大卒を使う、利己的な方がいますよね。汚職した政治家の学歴をつい調べちゃうんですけど、そこで東京大学って書いてあると本当に怒りが湧きます」