韓国の総人口と年齢の割合の劇的な変化
韓国では少子化が大きな社会的課題であるとの認識が強まった00年代以降、政府が繰り返し総合的な少子化対策の基本計画をつくり、保育所を増やし、無償保育や育児休業制度を拡充する、といった取り組みを進めてきた。
ある自治体の担当者は「少子化で先行した日本の政策も参考にしていますが、おおむね取り組みは似ている印象です」と話す。打ち出の小づちのような政策はないわけだが、取り組みに力を入れる背景には、進む少子化を食い止めたいという強い危機感がある。
23年12月に韓国統計庁が発表した72年まで50年間の人口推計は、少子化が今後の韓国社会をどれだけ変容させるかを改めて示す内容だった。
推計によると、22年に5167万人だった全人口は72年には3622万人に減るという。経済活動の主な担い手となる15〜64歳の割合は71.1%から45.8%に減る一方、65歳以上の高齢者人口は17.4%から47.7%に急増する。
「現在の韓国のように人口構成がこれだけ急激に変われば、社会が耐えられません。人口減少が仮に避けられないとしても、その速度を緩和するためにも少子化対策は必要です」
記者が数年前にインタビューで聞いた、韓国の専門家の見方だ。
韓国では24年4月に予定された総選挙に向けても、与野の2大政党が仕事と子育ての両立支援や結婚・出産時の金銭的な支援の強化など、少子化対策を主要公約に打ち出した。
尹錫悦大統領も、24年2月に行った韓国KBSテレビのインタビューで、少子化対策が「最優先の国政課題」と強調した。
ただ、韓国の対策はこれまで主に子育て世帯の支援が中心だった。結婚や出産に踏み切れない、あるいは考えない若い世代が多い、という中では効果が限られるとの指摘は少なくない。
取材・文/朝日新聞取材班 写真/shutterstock