「やはり総理は石破さんではなく、進次郎でいくべきだった」
一方の進次郎氏は、石破政権発足時に党選対委員長に起用されたが、昨年10月の衆院選翌日に「敗北の責任をとる」として、その職を辞した経緯がある。いさぎよい対応だが、石破総理を支える立場からいち早く抜け出したともいえる。ではなぜ、この難しい時期にわざわざ農水相を引き受けたのか。
進次郎氏の後見人である菅元総理の周辺からは、3月に発覚した石破総理の商品券配布問題の前後から「やはり総理は石破さんではなく、進次郎でいくべきだった」との声が漏れ始めるなど、いまだ彼を総理候補として見る向きは根強い。
党内で「参院選後の石破退陣は既定路線」(前出・自民中堅)といわれる中、進次郎氏としても、難しいコメ問題対応で成果を出し、次の総理候補として存在感をアピールしたいという打算もあるのだろう。
自民党にとっての最大の問題は、参院選を無事に乗り切れるかどうかだ。
石破総理は、野党がほとんど一致して求め、世論調査で約7割が求める消費減税にも後ろ向きだ。消費減税に対抗できる目玉政策も打ち出せていないにもかかわらず、国会では「税を財源とする社会保障費と関係し、将来世代の負担にも直結する」などと自説をのん気に語っている。
自民党のベテラン参院議員が語る。
「参院選の惨敗は濃厚なのに、執行部には危機感が感じられません。消費減税に後ろ向きなことや、江藤氏をめぐる後手後手の対応をみても、それは明らかでしょう。楽観的すぎる見通しを描いているのではないか。国民民主党などを連立に巻き込んで政権を維持できる程度の負けならまだいいのですが、私はそれ以上に負ける可能性もあるとみています。
江藤氏の問題を巡り、石破さんは『任命責任は私にある』といっているのだから、本来は参院選前に責任をとって辞めていただき、新総裁で参院選を戦うのが選挙上も一番いい。ただ、派閥解体の影響もあり、石破さんに本格的にプレッシャーをかけられる存在もほとんどおらず、党内政局は異様に穏やかです。このままでは本当に座して死を待つのみです」
自民党参院候補者たちの憂いは深刻だ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班