石破総理と林官房長官の間には強固な信頼関係はない
こうしたスキを野党が見過ごすはずがない。20日の夕方に、野党5党の国対委員長会談が開催され、江藤氏の更迭要求で一致した。政権側が応じなければ、農水相不信任案を提出する方針が固まった。少数与党である石破政権は追い込まれたあげく、野党に外堀を埋められ、江藤氏を事実上更迭するほかなくなった。
自民党の中堅議員は筆者の取材に対し、「すべて野党のペースでものごとが進んでいる」と嘆く。
「安倍政権では、当時の菅義偉官房長官が危機管理対応を担い、河井克行元法務大臣の公選法違反が報道された際には、翌日に辞任させるなど、スピード感のある対応がみられていた。石破総理と林芳正官房長官の間には、“安倍―菅”関係のような強固な信頼関係はなく、それが野党に追い込まれたあげくの更迭劇という遅きに失した対応につながった一因との指摘もある。
ただ、一番は石破総理が『これくらいのことで更迭したら、他の閣僚に問題が発覚したとき、どうなる』と辞任ドミノを恐れたせいだと言われています」(自民党関係者)
窮地の石破総理が、江藤氏の後任として白羽の矢を立てたのが、小泉進次郎氏(44)だった。
石破総理と小泉氏は昨年の総裁選ではライバルとして対峙した。とはいえ、2021年の総裁選ではタッグを組み、河野太郎前デジタル担当相(62)を担ぐ「小石河連合」で共闘した間柄として知られる。石破総理は今回の小泉氏の起用について、
「強力なリーダーシップとこれまでの経験のもと、(課題)解決に向け、全力で取り組んでもらいたい」
と、表向きは小泉氏に信頼を寄せているかのような発言をした。
しかし、昨年の総裁選前には知人との会食の席で、
「進次郎に総理ができるのか」
と、吐き捨てるように語っており、本心からその能力を評価しているとは思えない。それでも、事ここに至っては、抜群の知名度を誇る進次郎氏に頼るしか選択肢はなかったのだろう。