「物価が下がった」という幻想を持つだけになる可能性も
これはレストランの例だが、スーパーなどの小売店も同じだろう。消費税を一時的にカットしたからといって、価格が確実に安くなるとは限らない。さらにスーパーの店頭に並ぶような食料品は天候や輸送状況、調達価格、競合の動向などによって目まぐるしく価格が変化しており、価格の変化を消費者が把握し続けることなど不可能に近い。
例えば、消費税8%が課税されている時期に鶏のモモ肉が100グラム88円(税別)で売られていたとする。320グラムでパッケージされていれば、販売価格は304円(税込)だ。この鶏肉が消費税0%適用後に100グラム95円(税別)で販売されていれば、消費税がかからなくても320グラムの販売価格は304円(税別)である。
スーパーで買い物をしていて、この価格差を見分けられる末端の消費者がどれだけいるだろうか?
せいぜい、「304円で買えたこの鶏肉は8%の消費税がかかっていれば328円であり、20円以上安く買うことができたんだ」などと、お得に買えたという幻想を消費者が持つだけだ。負担軽減になどなっていない。
すでにスーパーは過度な値下げ戦略を改めており、安売りをするという意識が薄くなっている。背景には価格転嫁が進んで収益力が高まったことがあるだろう。2024年のスーパーの平均営業利益率は1.39%だった(「スーパーマーケット年次統計調査」)。前年から0.4%も向上している。水道光熱費、人件費が高騰したにもかかわらずだ。
インフレをバネに稼ぐ力を高めたスーパーが、鶏肉の例のように消費減税分の価格調整を行なうことも十分考えられるのではないか。これは何も消費者を騙そうとするものではなく、値上げ余地を利用するのが「商売の鉄則」だからだ。
スーパーの値下げに対するインセンティブが弱まる中で、期間限定消費税0%の効果がどれだけあるのか疑問である。