人生はできないことや知らないことばかり…誰しもが抱く劣等感が実は人生に活かせる有用な感情になる可能性
人は誰しも無意識に他人と自分とを比較し、劣等感を抱いてしまう。また、人より優っているという優越性を感じたとしても、それが常に勝ち続けないといけないという緊張感をうみ、本来の人生の在り方を見失わせてしまう。
アドラー心理学の第一人者で哲学者の岸見一郎氏が、人と必要以上に比べず「普通に生きること」の有用性を記した新書『「普通」につけるくすり』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成して劣等感がいかに無用なものかを解説する。
知らないことに劣等感を持つ必要はない
さらに、知らないことに劣等感を持つ人もいますが、そんな必要はありません。知らないことは、歩けないことと同様、ただ知らないだけで劣っている状態ではないからです。
幼い子どもが知らないことがたくさんあるからといって、その子どもが劣っているとは思わないでしょう。大人も何でも知っている人はいません。しかし、だからといって、その人が劣っているわけではありません。学べば知識は身につきます。
私が伝えたいのは、「劣等感がなくても、健全な努力はできる」ということです。努力に、劣等感や他者より優れていたい優越性の追求は不要です。
知らないことがあれば学び、成績がよくなければ次回はいい成績を取れるように勉強することが有用な優越性の追求ですが、劣等感に結びつける必要はありません。知らないことがあるからといって劣等感を持つ必要はなく、知らないことがあれば知識を身につければいいだけのことです。
知らないことを知ろうとするのは、人間の根源的な欲求です。知識を身につけようとすることも、リハビリをして歩けるようになろうとすることも、劣っているから克服しなければならないと、劣等感を克服するために努力することではありません。
アドラーも、「劣等感があるから優越性を追求する」と言うと、劣等感が優越性の追求の原因と見ることになるので、後には劣等感についてあまり語らなくなりました。
写真/Shutterstock
2025/5/1
1,870円(税込)
336ページ
ISBN: 978-4763142214
「馬鹿につける薬はない」という言葉がありますが、
「普通につける薬」というのはあるのでしょうか?
本書は「自分は思っていたより普通かもしれない」「特別でないとしたら受け入れがたい」そんな不安を覚えた、ある青年から寄せられた悩みと向き合う中で生まれました。
「特別でなければいけない」という不安の根底には、常に他者との比較があります。
どうすれば、他者との比較から自由になり、自信を持ち、幸福に生きることができるのか。
本書では、「特別になろうとしないが、同じでもない」生き方を探ります。
人生から緊張を手放す思索を、はじめましょう。
【目次より】
第一章 なぜ特別でなければならないと思うようになったのか
第二章 特別でありたい人の脆い優越感
第三章 普通であることの意味
第四章 劣等感の克服
第五章 自信を持って仕事に取り組む
第六章 ありのままの自分から始める
第七章 自分の人生を生きる