Z世代は頑張ることを諦めはじめている
タワマン文学の代表的な書き手である麻布競馬場の2025年5月時点での最新の単著であり、直木賞候補にもなった『令和元年の人生ゲーム』は、タワマンに憧れる時代の次を描く作品とも言える。
「『たくさん働いて自己実現しよう』とか『圧倒的に成長しよう』といったこれまでの価値観に対し、急に『これからは定時で帰れ』と言われて戸惑った若手社員って、たくさんいたと思います。今回の本で書いたのは、時代によって正しさというものがすごく移り変わった10年間だと思っていて、変化する時代に振り回された若者たちの鎮魂歌、新しい一歩を踏み出せず悩んでいる主人公を書きたいと思いました」
「今の20代、いわゆるZ世代と呼ばれる人たちと話すと『もう東京にもタワマンにも憧れない』と彼らは言う。『では、皆さんはタワマンなきあとにどこに行くんですか』と聞くと、『いや実はそれは分からないです』と。タワマンの時代は終わったけれど、次に僕たちはどこへ行くのかという惑いと不安、これはこれからの時代の空気になるのではないか。その気づきが今回の執筆の発端になっています」
(「“タワマン文学”麻布競馬場さんが描くZ世代の本音とは」NHK、2024年7月17日)
コンサルに入って不安をスキップしたい
成功の象徴を描くタワマン文学が、成長に囚われた時代の次を言葉にしようとする。この文脈に当てはめると、コンサルという仕事はもしかしたら時代遅れなものになっていくのかもしれない。
Aさんのインタビューからもわかるように、コンサルという仕事には「安定したい、だから成長したい」というモチベーションに応えられる環境があると信じられており、さらには常にやりたいことを求めてくる時代のムードを先送りにして目の前の業務に向き合える仕組みもある。
むしろ麻布競馬場の言う「惑いと不安」をスキップするための場所として、コンサルという仕事は次の時代の若者にも選ばれる可能性がある。
『令和元年の人生ゲーム』は平成28年(2016年)から令和5年(2023年)までが作品の舞台となっているが、各年代にまたがって登場するのが、新卒で入社したメガベンチャーで「総務部あたりに配属になって、クビにならない最低限の仕事をして、毎日定時で上がって、そうですね、皇居ランでもしたいと思ってます」などとうそぶく沼田というキャラクターである。
そんなことを言いながらも社内で新人賞を獲るなど注目を集めていた沼田だが、令和5年のタイミングでは過去に仕事を通じてメンタルを壊していたことについて示唆される。
周りをかく乱しながらおいしいところだけ持っていこうとしても、決して逃げ切れるわけではない。優秀とされる層は、どんな態度を取ろうとも知らず知らずのうちに「成長」の磁場に取り込まれていく。
文/レジー













