「格闘技界のセカンドキャリアには物流が待ってる」
そんな卜部が社長を務める『マルト便運輸倉庫』のサイトには「アスリートのセカンドキャリアを応援しております」との記載も。
「アスリート全般かどうかはわかりませんが、格闘家のセカンドキャリアって、わりとみんな困っているんです。指導者になれたらいちばんいいんですけど、そうなれない人がほとんど。中には道を逸れてしまう人もいる。だったら、物流業界を一緒に盛り上げてほしいと思っています」
「格闘家×物流」の相性のよさを、卜部は力説する。
「フィジカルは強いし、頑張る才能もある。もちろん現役選手だっていい。“午前中だけの勤務”など時間の融通も効かせられるし、荷下ろしは“お金がもらえるトレーニング”。
慣れないことに最初はストレスを感じるかもしれませんが、日々覚えていく楽しみは実感できるし、堅苦しい世界じゃない。別に僕の会社じゃなくてもいいんです。運送、倉庫……物流業にはいろんな会社があるので。
声を大にして言いたいことは、格闘技界のセカンドキャリアには物流が待ってる。格闘技で培ったメンタルや責任感が発揮できる環境です。ぜひ、参戦してほしいですね」
ネット通販が当たり前となった今、企業だけではなく、個人の生活も物流によって支えられている。
「物流業はインフラ事業だと、僕は思っています。今の世の中になくてはならない仕事であり、そこに責任と自信を持てる。そして、日本の景気にも必ず影響がある事業ですから」
引退から3年、会社設立から5年。卜部の精悍な顔には、物流マンとして誇りが満ち溢れていた。
取材・文/池谷百合子 撮影/廣瀬靖士