今後は芸人以上の活躍をしたい

「おもしろい女」として生きていけているのが、心からうれしいといういぜんさん。

「私も猫をかぶったりするときもありますが、芸人の仕事をしているときは、みなさんがめちゃくちゃツッコミをしてくれるので楽しいし、『本当の自分を出せてるじゃん』と思います」

今の喜びがあることを嬉々として語る一方で、泣いていた日々もあったと話す。

「来日したての頃は、知り合いもいなくて、日本語が下手だった。そのころが一番つらくて、よく泣いてましたね。そんな私が、今では(千鳥の)大悟さんたちに『いぜん最高じゃん』と言ってもらえるようにまでなって、やっぱり日本に来てよかったとすごく思います」

そう話す、いぜんさんは、最近では違った意味で涙を流したんだとか。

「私の動画につくコメントで『いぜんさんを見ると、日々の仕事の疲れが取れるから私も頑張れるようになりました』と書いてありました。読んだときはマジで大号泣。私が一方的にみなさんにお笑いを届けているだけじゃなくて、お互いに救い合っているみたいで。

私は全中国人の代表でもないし、1人の人間として見てもらえたら一番うれしいです。1人の人間として、応援してくださるみなさんと救い合ったり、切磋琢磨したり、成長したりできたら一番理想的ですね」

今後は東大大学院で学んだキャリアを活かし、芸人以上の活躍も視野に入れているという。

「芸人としてもっといろんな番組に出て、自分のおもしろさをたくさんの人に届けたいというのもありますが、私は理系で金融系のインターンもしていたので、コメンテーターとしてもいろいろ発信したい。

それに、日本国内あちこちに行くのが好きなので、日本の経済や、地域の活性化にも貢献したいと思っています。バラエティ番組で芸人として冒険するときもあれば、報道番組で固い話題も真面目に解説する。そのギャップの面白さもみなさんに届けたいですね」

夢は広がるばかり。そんな、いぜんさんの名前にはこんな意味がある。

「『いぜん』は漢字で『怡然』と書きます。中国語でも日本語でも『喜び、楽しむ状態を人に与える』という意味なんですね。両親がつけてくれた本名ですが、今まさに名前の通りに生きられている。いま人生がすげえ楽しいです」

いぜんさん 撮影/齋藤周造
いぜんさん 撮影/齋藤周造
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いぜん●1998年4月生まれ、中国・北京出身。中国の超難関高校を卒業後、東京都立大学理学部に留学する名目で来日。テレビ番組の出演をきっかけに注目を集める。現在はピン芸人として活動しつつ、東京大学の大学院生として核融合の研究をしている。 

取材・文/木原みぎわ 撮影/齋藤周造