「日本の漫才をバリバリやりたかった」

自分なりの人生を探求し続ける日々。その中心には「お笑い」があると話すいぜんさん。

「中国人・女性・東大生という、いろいろなバックグラウンドがあるからこそ、『普通だったら場の空気をゲットできないかもしれないけど、私にしかできないボケだからやってみようかな』というチャレンジが即座にできる」

賞レースでは先輩芸人とユニットを組むこともあるそうだが、そこには悩みもある。

「日本人の方と組むこともあるんですけど、そうすると相手に依存しそうだし、ネタは日本人の方が考えてると思われそうで、基本はピン芸人の方がやりやすいです。スベっても自己責任だからやってやる、みたいな。チャレンジ精神がある強者女性でありたいので(笑)」

いぜんさんが普段からコンビを組まないのには別な理由もあると話す。

「相方がいると、相方の立場も考えなくてはならないですからね。そういった人間関係にエネルギーを消耗するよりは、芸人という立場を越えたいろんな人たちとの関係性にエネルギーをかけたいと思うんですよね」

いぜんさん 撮影/齋藤周造
いぜんさん 撮影/齋藤周造

立場を越えた人たちとの出会いはネタ作りにも活かされている。

「いろんな人と話していて、ウケたものをストックすることが多いんです。例えば飲み会で『とりあえず生で』と言ったらウケて、中国人の片言だと面白がられるんだとか。

後輩と苗字について話していたとき、『(私の本名の苗字である)李って中国には普通にいるけど、何人くらいいるかな』って調べたら1億人いて、後輩がめっちゃウケて。『あ、これネタになる』って。

やっぱり、私が中国人だということを踏まえたうえでのネタはウケるんですよね」

来日した当初は、「日本の漫才をバリバリやりたかった」と話すが、それよりもお笑いの世界で生き残ることを選んだという。

「最初は、中国人であることを売りにしたくなくかったんですけど、妥協することを学びました。あらゆる武器を出してウケることにつなげないと、今のお笑いの世界では生き残れないと考え直した。髪型はずっとショートだったけどロングにしたし、衣装はチャイナ服にして。女性っぽくしていたほうが今のしゃべり方とギャップがあってウケると思いました」