副業でしていたシルバージュエリーの輸入販売を本業に

外資系企業の経理部門で働いてきたK.Nさんが、副業として続けていたシルバージュエリーの販売を本業にしたのは52歳のとき。リスクのない形で趣味を仕事にできた理想的なパターンですが、そのプロセスを伺ってみると、K.Nさんの一歩踏み出す勇気がチャンスを呼び込んだように思います。

K.Nさんが「この先どうしようかな」と思い始めたのは50歳を迎えたときです。やりがいも感じて楽しく働いてきたものの、優秀な後輩もいる中で、少しずつ自分がお荷物になっているんじゃないかと思う場面が出てきたのです。

定年まであと10年、この先もっとつらくなるかもしれないと思ったときに考えたのが、副業のシルバージュエリーの販売を本業にできないかということでした。

シルバージュエリーに出会ったのは、29歳のとき。新卒入社した大手建設会社で事務職をしていましたが、結婚の予定もなく、キャリアに展望もなく、単調な毎日を変えたくて単身シンガポールに渡ったことがきっかけでした。

現地で素敵なセレクトショップを見つけ、そのお店が扱っていた天然石を施した美しいシルバージュエリーに心惹かれたのです。足しげくお店に通うようになり、オーナーとも懇意に。K.Nさんは33歳のときに帰国して外資系企業に転職しますが、交流は続きます。

数十年単位で好きを仕事にするケースも
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帰国から10年後、そのショップオーナーが日本で展示会をやるというので、有給休暇をとってお手伝いをします。しかし残念ながら全く売れず、なんとスーツケース2個分のシルバージュエリーを「あとはよろしく」と託されてしまうのです。

困りましたが、毎週のように友人を自宅に招いてアクセサリーパーティを開くことに。友人たちも楽しんでくれて、K.Nさんも自分がよいと思うものが売れる喜びを実感したのです。

この経験を経て、K.Nさんはまた一歩踏み出します。年に一度、旅行も兼ねてインドのデザイナーを訪ね、自ら仕入れをして販売するという副業を始めたのです。

それから7年、友人のオンラインショップに出品するなどして、多いときで月10万円ほどの収入を得られるようになっていました。独立する下地はできていたのです。

とはいえ会社を辞める踏ん切りはなかなかつかず、2年悩みます。最後は「えいやっ!」と辞表を出しましたが、実際辞めてみると、好きなことが仕事になり、四六時中自然体の自分でいられることに、この上ない心地よさを感じるとのこと。また定年のない働き方を手に入れた心強さも実感しているそうです。

シルバージュエリーショップを運営しながら、100歳になってもみんなとおしゃれを楽しみたいと笑顔で語っていました。

#2 に続く

文/河野純子 写真/Shutterstock

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし
河野 純子
60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし
2024/12/24
1,870円(税込)
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ISBN: 978-4041151921

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「とらばーゆ」元編集長にしてライフシフト・ジャパン取締役CMO、
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