親の介護に向き合う時間は、自分の人生を考える時間

年老いた親とどう向き合っていけばいいのかは、私たちの年代の共通の悩みです。すでに介護を経験した人、いままさに介護をしている人もいるかと思います。

それぞれの親の健康状態や住んでいる場所、夫や兄弟姉妹の有無、経済状況などによって、必要な情報や選択は異なってきますが、ここでは私自身が学びになったライフシフターの選択をご紹介したいと思います。

B.Kさんは、認知症の母親の介護のために会社員を卒業し、「雇われない働き方」へとシフトしました。

新卒で入社したホテル業界のブライダル部門で長年活躍してきたB.Kさんですが、40代に入ると母親の介護が必要に。ひとりっ子のB.Kさんは、離れて住む母親の世話をするために時間のやりくりがしやすい別部門に異動します。

ブライダル部門で活躍してきたB.Kさんに起きた変化
ブライダル部門で活躍してきたB.Kさんに起きた変化
すべての画像を見る

けれども新たな上司との人間関係や、100%仕事にエネルギーを注げない負い目もあり、また会社が急成長する中で自身のキャリアパスが見通せなくなったことなども重なって、心が騒ぎ始めたのです。とはいえ愛着のある会社を退職する決心がつかないまま、1年以上がすぎていました。

そんなB.Kさんをはっとさせたのが、母親の「私、こんな風になってしまうんだったら、もっとやりたいことをやっておけば良かった」という言葉でした。その言葉を聞いて、自分がそれまで会社人間で、自分の人生を生きていなかったことに気づいたといいます。

そして「このまま続けていたら、母のように晩年に自分の人生を後悔することになるかもしれない。母が最後の最後に自分に教えてくれることがこれなのか」とありがたさがこみ上げ、退職することを決意します。

けれどもやりたいことがわからない。そこでB.Kさんは介護をしながら、本で学んだ「人生を振り返るワーク」をして自己理解を深め、キャリアコンサルタントという仕事を導き出しました。

資格を取得し、講師経験を積むために半年ほど人事コンサルティング会社に勤務しましたが、自分の人生を生きるために早々に個人事務所を設立。現在は職業訓練校の講師の仕事をメインとし、誰もが自分に合った仕事に就けるようアドバイスをしています。

コンサルタントとして独立
コンサルタントとして独立

母親は退職後1年ほどで亡くなりましたが、B.Kさんは仕事を辞めて介護に専念してよかったと語っています。

「やれることはやったので納得して見送ることができましたし、自分の人生を考える時間をもらえ、その時間も母からのギフトだったと思います」と話していました。

私がB.Kさんのライフシフトから学んだことは、親の介護と向き合う時間は、自分の人生と向き合う時間でもあるということ、そして会社員であれば通算93日間の介護休業があるので安易に離職しないほうがいいという考え方もありますが、いずれは会社員を卒業するのですから、親の介護に向き合う時間を活かして、「雇われない働き方」へとシフトするのも1つの方法だということです。