免税制度の廃止で2400億円の税収増との試算も
こうした状況の中、「免税制度そのものを見直すべきだ」との議論が出はじめた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は今年3月に自身のYouTubeチャンネルにて「外国人観光客にも消費税を払ってもらう 検討すべき 玉木雄一郎が解説」という動画を公開した。諸外国の状況を解説したうえで、外国人観光客にも消費税を払ってもらうことを主張している。こうした施策をすることで年間約6000億円の増収になるとの試算も公開した。
立憲民主党の大西健介氏も、今年2月の衆院予算委員会で外国人観光客の免税措置の継続を疑問視。物価高に苦しむ国民から税金をしぼり取るばかりではなく、日本国内の旅行を楽しむ余裕のある外国人にも税金を払ってもらえばいいと主張した。大西氏によれば、年間約2400億円の増収が見込まれ、財源確保につながるという。
大西氏はインバウンドのステージが様変わりし、オーバーツーリズムで自治体が疲弊していることにも言及。免税措置の廃止で旅行者が減ったとしても、メリットがあることを視野に入れて発言した。
これに対し、石破茂首相は日本の品物を安く買えることは、お金を持たない旅行者に対する誘因となるなどと反論し、免税措置継続の意向を示している。
外国人観光客の土産物に消費税を課すことの一番の問題点は、二重課税になることだ。旅行者が日本で買った免税商品を、自分の国に持ち込んだ場合、それぞれの国が定める付加価値税が課される。これは日本でも同じだ。20万円を超えるものを持ち込む場合、消費税が発生する。
日本が免税制度を廃止すると、旅行者は日本で課税され、帰国した際に自国でも課税されるというわけだ。
ただし、免税制度を廃止している国もある。たとえば、EUから離脱したイギリスがそうだ。EUでは加盟国間の移動を伴う場合は付加価値税を課税しないというルールがあったが、離脱に伴なって適用義務がなくなった。そのため、政府は税収を増やす目的で廃止したと説明した。
2026年11月に施行される免税制度改正の次は、外国人旅行者に消費税を課すかどうかの新たな議論が必要になるはずだ。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock