5年連続で春闘に満額回答の好調トヨタ
こうしたトランプ関税の影響は多くの日本企業に打撃を与えることは必至だろう。
例えば、トヨタ自動車はアメリカで販売している自動車のおよそ2割を日本から輸出している。アメリカでの車両価格は当面維持する方向で検討していると報じられているが、つまりは関税による価格上昇分を会社が吸収するということだ。
トヨタは2024年3月期に5.3兆円もの営業利益を出し、営業利益率は7%から12%近くまで跳ね上がった。この立役者は“営業面の努力”で、2兆円もの増益効果が働いている。営業面の努力とは、利幅の大きい高収益車種の販売好調による影響が大きい。
2025年3月期は12%の営業減益を予想しているものの、営業利益率は10%と2桁台をキープしており、依然として高収益体質は維持してきた。
トヨタは2025年の春闘で労働組合の要求に満額で回答。組合側は最も高いケースで月2万4450円の賃上げ、ボーナスは前年と同様の7.6カ月分を要求していた。これに対して、満額での回答は5年連続となる。同じく自動車部品大手のデンソーやアイシンも満額回答し、国内の主力産業である自動車業界がけん引する形で、他の産業にも賃上げ効果が波及している。
しかし、これも会社が利益を出しているからこそのものだ。トヨタ自動車による関税分の吸収により、好調を牽引してきた“営業面の努力”は大幅に削られる可能性が高い。
2017年3月期には3割もの営業減益となっていたトヨタだが、2017年の春闘は組合の要求した3000円のベアに対して回答は1300円、家族手当の拡充を合わせても2400円だった。2018年もほぼ同水準だ。
賃上げ圧力が急速に萎む懸念が出てきたわけだ。
国民民主党の榛葉幹事長は、4月6日に奈良市で開かれた党の奈良県連大会で大手の春闘が終わったことに触れ、「問題はこれからだ」と賃上げが減速することに警戒心を滲ませた。トランプ大統領は「私の政策は決して変わらない」と強硬姿勢を見せていることからも、来年の春闘を見越した榛葉幹事長の発言はこの問題の長期化を示唆している。