月収30万円なら約4.5万円引かれる
まず、社会保険料は個人から毎年数十万円近いお金を奪っていると神田氏は指摘する。
「社会保険料は従業員1人あたり約30%を負担する必要があり、労使折半で企業と従業員で15%ずつわけることが一般的です。例えば、月収30万円の人であれば毎月約4.5万円引かれることになります。ただ、2003年以降は賞与からも社会保険料がかなり多めに引かれるようになりました。給料と合わせると毎年かなりの額が社会保険料の名目で手取りから奪われています。
私としては社会保険料を現在の4分の1まで引き下げるべきと考えています。春闘が盛り上がっていますが、満額回答を表明している企業の多くは大企業です。日本企業の約9割は中小企業ですので、日本で働く多くの従業員が賃上げされるわけではありません。
ですから確実に日本のほとんどの従業員の手取り額を増やそうと思ったら、社会保険料を引き下げるのが一番簡単です。先の例でいえば、給料から天引きされる4.5万円が4分の1の1.1万円になれば手取り額が確実に増え、従業員本人も手取り額が増えたという実感も湧いてきますよね。」
岸田内閣は企業に賃上げを促しているが、それよりも社会保険料の引き下げという手っ取り早く効果的な施策を今すぐ講じべき、と語気を強めた。
社会保険料を払えずに倒産する企業
また、社会保険料を支払えずに倒産する“社保倒産”は決して珍しくなく、社会保険料は個人だけでなく企業にとっても大きな負担になっている。そういった状況を鑑みて、神田氏は社会保険料はもちろん、消費税の引き下げも不可欠だという。
「社会保険料や消費税など税金を支払えずに倒産する“公租公課倒産”も少なくありません。昨年からは新型コロナウイルスの影響で売上高が減少した中小企業や零細企業を対象に、金融機関が特例的な条件で資金を貸し出した制度『ゼロゼロ融資』の返済に追われている企業も少なくありません。赤字でも支払いを強制される社会保険料の引き下げに加えて、消費税廃止、ゼロゼロ融資の債務免除、もしくは据置期間の延長も合わせてしていかないと中小企業の資金繰りは改善していかないと思います」