女性の目の前で繰り返されたパワハラ、発症した精神疾患
全柔連に内部通報したのはO氏だけではない。事務局の女性職員もO氏へのパワハラを目の前で再三、見せられ適応障害を発症したと訴えたのだ。
女性は全柔連に救いを求めた。
「上司がパワハラを受け続けたうえ、解雇された。常軌を逸しており、平常心で働ける環境ではない」
医師からは適応障害で自宅療養が必要だとする診断書が出され、女性は執行部が出勤する際は顔を合わせなくて済むよう、在宅勤務を認めることを求めた。全柔連も都柔連側にこの情報を共有したという。
ところが女性が通報した後、専務理事は驚くべき行動に出る。加害者とされた自ら、女性にこう問いただしたという。
「何がパワハラなのか、具体的に説明してもらわないと分からないじゃないか」
ちなみに全柔連は内部規定で、所属する団体を含めて内部通報者に不利益が及ばないよう適切な措置を講じるとしている。
都柔連は執行部と女性が入れ替わりで出勤すると約束したにもかかわらず、女性は専務理事から直接詰問されたという。「さらなる恐怖を覚えた」「約束も守られていない」として全柔連に追加で嘆願書を提出した。
「元」専務理事なら迷惑を掛けない?
そんな中で開催された今年3月の理事会。出席者によると、決算の説明や予算案などの審議が進む中、専務理事の発言が飛び出した。
「突然のことながら、専務理事を辞任したく理事会の承認を賜りたい。辞任届も用意している。一生懸命やってきた。しかし、私がこの職にいると会議がスムーズに進まず、運営に支障が出てくる」
これを受け、弁護士でもある監事の一人が補足説明した。「実は全柔連ではパワハラに当たるという判断が出ている」。そして専務理事はこう言い切った。「処分をしっかり受けて立つ。逃げる気持ちはない。『70歳にもなって』という一言がパワハラに当たるらしいが、私から言わせると、私の普段の話としては普通のことだ」
世間の「普通」との齟齬はさておき、こうも付け加えたという。
「泥を受けようが、マスコミに出ようが、甘んじて受ける。しかし連盟に迷惑を掛けることが心苦しい。元専務理事のほうがまだいいのではないかなと思うので、どうか辞任を認めていただきたい」
つまり「元専務理事」であれば迷惑を掛けないという認識らしい。監事のほか、2人の理事が「引き続きお願いしたい」と慰留した。議論を引き取るとしてついに、会長が口を開いた。
「継続して働いてもらいたいが、いかがか」
関係者は「出席した38人のうち、拍手していたのは2~3人しかいませんでした」と証言する。
「時期を改めて諮るべきだ」との意見が出たが、会長は譲らない。「いや、もう拍手で決める」。結局、専務理事の進退は執行部預かりになったという。
こうした状況にO氏はあきれかえる。
「東京都によれば、公益法人では拍手による決議は認められていません。全柔連の処分を見越した茶番劇と言えます」