善意の上に成り立つ、スクールフォト業界
需要は低下傾向にあるものの、学校カメラマンは今なお不可欠な職業である。
スマートフォンでの撮影が可能とはいえ、保護者がすべての学校行事に参加はできるわけではない。我が子が友人たちと過ごす表情や、真剣に行事に取り組む姿を記録する写真は、現代でも変わらぬ価値を持っている。
だが、同時にセンシティブな写真も扱うため、カメラマンには高い倫理観が求められる。このまま待遇の改善、特に報酬の見直しがなければ、質の低下を招くおそれがある。これは保護者にとっても望ましくない事態であろう。
事実、事業の継続は学校カメラマンの善意に支えられている面が大きいという。
「カメラマンの多くは、収入以上に人に喜んでもらうことを第一に考えて仕事をしています。学校撮影では子どもたちの大切な時期を記録に残せることに喜びを感じている方も多く、そうした使命感に支えられて成り立っている側面があります」
藤井さん曰く、この状況を打開するには、事業構造自体を見直し、DX化を推進することが有効だという。
「DXによる管理コストの削減を通じて、カメラマンへの報酬の還元を実現することが重要です。下着の写り込みなどの写真修正や確認作業をAIでデジタル化することで、必要な工数を大幅に削減できると考えています。
当社の例でいえば、従来電話で行なっていたアサインをGoogleカレンダーと連携させ、空き状況を効率的に管理できるシステムを導入しました。管理コストの削減を突き詰めることで、最終的には中間業者を介さずに学校とカメラマンが直接やり取りする形が理想的です。
スマホで気軽に撮影ができる今でも、プロのカメラマンにしか撮れない我が子の表情に感激してくださる親御さんは多いので、なんとかこの業態を日本に残したいと思っています」
取材・文/福永太郎
写真/shutterstock