感覚

赤ちゃんがハイハイを始め、つかまり立ちをして歩くまでの動作は、先天的な運動感覚によるものと思われる。その後は随意に行動していく中で運動感覚は身につく。この随意の運動は後天的と言える。

また運動感覚の多くは、いったん覚えてしまうと忘れない。たとえば自転車に乗ることができると、何年乗っていなくともその感覚が残っているため、また乗ることができる。

このため、それまで経験したことのない運動をできるだけ取り入れて行なうことにより、異なる感覚が増えて、動きの幅は広がる。

運動のパターンは、大きくは並進運動と回転運動に分けられ、そしてそのふたつをミックスした運動ということになる。

たとえば各種球技や陸上競技各種目、水泳、飛び込み、器械体操各種目、スケート、スキーなど、挙げればきりがないが、自らが経験していない運動を行なうことで、運動感覚の幅を広げておく。

さらにリズムに対する身体表現力(ダンスなど)や、動きの優れた選手の模倣、さらにトランポリンのような空間での身のこなしなども重要と思われる。これらの多様な感覚を身につけることにより、前後・左右・上下と立体的に、あらゆる方向に動いていける感覚を持つことになる。

写真/shutterstock
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どんなスポーツをやるにしても何らかのプラスがある。父兄の方々においても、子どもの育成のために是非検討していただきたい。多くの場合、最初から野球やサッカーだけでは、その感覚のみに終わってしまう。

競技者としての「動作の土台となる多くの感覚」というものがある。「身体の素養」と言ってもいいが、それを持っていないと、技術面の土台となる動作の発展を止めてしまうことになる。

投げひとつをとってもオーバーハンド、サイドスロー、そして、下から上に持って投げたり横に振ったりして投げる、突き出すといった具合に、投げ方はいろいろある。

それらに一通り習熟していることも「底辺となる感覚」の一部である。陸上の女子でやり投げの日本記録を持っていた、海老原有希という選手がいるが、彼女も小さいころ野球をやっていたようだ。オーバーハンドで投げる感覚が、やり投げにも生かされている好例である。このような選手は結構多い。